人物を中心に、編集・広告と幅広く撮影するフォトグラファーの小田駿一さん。現場の雰囲気づくりを得意とし、多くの編集者が彼を頼る。
アートワークとして、新型コロナウイルス蔓延に伴う緊急事態宣言下、東京の夜の街を撮影した『Night Order』シリーズを発表。社会との繋がりの中から着想を得て、人の心と行動を動かす「Socio-Photography」を志向している。
そんな小田さんの生き方の一端、そして、側にある“コーヒー”の存在を聞いた。

「コーヒーは数ある仕事道具の一つ」(小田さん)
−−どのようにコーヒーを楽しまれていますか。
コーヒーって、不思議な飲み物ですね。「コーヒーとは?」の問いに軽やかに答えられるわけではないんですが、無意識に必要としているんですよね。特に仕事の時にはいつもそこにある。フォトグラファーとして、数ある仕事道具の一つとも言えるのかもしれません。やっぱり不思議。
カフェに立ち寄ってから仕事を始めることが多いのですが、そこではブラックのアイスコーヒーで。その理由も上記の通りで、狙った豆があるのではなく、少し苦くて飲みすぎない感じが、仕事しながらには至極ちょうど良いのです。コーヒーは替えが効かないのが面白い。
仕事柄、日本の各地を訪れることがあります。昔ながらの喫茶店では、まだまだタバコが吸えて、漫画や雑誌が置いてあって、地元の人たちが和気藹々とお話されています。この余白は、なかなか都会では感じられない。そうすると、ホットコーヒーを注文するなどして、レトロな雰囲気に身を預けることもあります。
一方で、仕事が忙しい時には、都会的なカフェにも足を運びます。WIFI完備・電源完備・広いテーブルがあるからです。こっちはこっちで、みんなせかせかしてて、ノイジーで。だからこそ、不思議と仕事に集中できたりするんです。
そうですね、私の場合は、コーヒーそのものを消費しているのではなく、そこにある空間を消費している感じでしょうか。

「好きなことを尊重してる人の人生って、非常にユニーク」(小田さん)
−−小田さんのマイルールは?
生業がフリーランスのフォトグラファーですので、異なる毎日を過ごすことになります。できるだけ柔軟に対応できるよう、厳密にルールを決めきらないことも。
それでも、毎朝、子どもたちを保育園に送り届ける時間を大切にしています。仕事柄、どうしても1日の時間が不規則になりがちですが、同じ時間に起きて、送り届けて1日を始める。そんなリズムを優先しています(遅くまで飲んだ日は大変ですが)。
また、Facebookが通知してくれる友人・知人への「誕生日おめでとう」コメントですね。いつもお世話になっている人に、なかなか面と向かって「ありがとう」「おめでとう」と言う機会もないものです。ありがた迷惑になっていないか心配しつつも、習慣になっていますね。笑
−−小田さんにとって素敵な⼤⼈とは?
「世の中に流されず、自分らしく生きている方」に憧れます。
人物撮影をメインとしてフォトグラファーの仕事をしているので、多くの魅力的な方にお会いすることがあります。また、お酒が好きですので、夜は夜でまた個性的な方にお会いする機会も。
すると、ついつい質問せずにはいられない、不思議な人っているんですよね。「えっ、なんでそれやってるんですか?」「あ、、、そんな生き方もあったんですね。」とか。ご本人は「自分らしく」なんて思っていないんですが、自分の好きなことを尊重できている人の人生って、非常にユニークなんですよね。

−−1 ⽇にあともう5分あったら?
一人で心を空にして、頭を空にして、ぼーっとしたいです。
今の仕事は毎日タスクに追われていてて、家に帰ったら、家の仕事もある。すると、毎日があっという間に過ぎ去ってしまうんですよね。仕事の時には仕事仲間と、家では家族と過ごしているので、なかなか自分だけの時間が取れない昨今です。
ただ、そんな忙しない日常を好きだったりするんですよね。1日は24時間しかなくて、いつ死ぬかもわからない。意識のあるうちには、何かしら意味のあることをしていたい。
そんななか、仮に5分だけ時間が伸びるなら、忙しない日常の自分から離れて、なんの意味もない時間を一人で過ごしてみたいですね。24時間の中では決してできない、特別な時間になりそうです。
小田駿一

1990年生まれ。2012年に渡英。2017年東京に拠点を移し、2019年symphonicに所属。人物を中心に、雑誌・広告と幅広く撮影。WEB