2004年からコーヒーの自家焙煎と自家製パンについて独学し、YouTubeやインスタグラムでその様子を発信する@mocha_kurashiさん。動画の中で語られる人生観や自分らしく生きる姿にファンが多く、現在YouTube登録者は22万人を突破。オリジナルブランド「コーヒーのあるくらし」では、自家焙煎珈琲豆やオリジナルグッズをデザイン・販売。著書『今日もコーヒーを淹れて』では、自身のコーヒーに対する想いを綴っている。
そんな@mocha_kurashiさんの生き方の一端、そして、側にある“コーヒー”の存在について聞いた。
魅せられて、早20年。コーヒーから人生を学ぶ日々
ーーどのようにコーヒーを楽しまれていますか。
私は1日平均2~3杯のコーヒーを飲みます。
自分で焙煎した豆を数種類常備しているのですが、シチュエーションに合わせて豆を選びます。例えば、目覚めの1杯は、甘み・苦味・コクがしっかり感じられる深めのコーヒー豆。午後のゆったりしたいブレイクタイムには、モカベースのフルーティーな豆。慌ただしい1日の終わりには、マイルドですっきりとした豆……というように。
ブレンドするときは毎回豆の比率も少しずつ変えているので、一期一会の味も楽しめます。何気なく組み合わせた豆が、想像以上においしかったら、それだけで、なんだか幸せな気分になれます。
豆は電動ミルで引くこともあれば、よりコーヒー時間をゆっくり満喫したいときは、手挽きミルでゴリゴリ挽くことも。抽出方法もペーパーだけでなく、ネルドリップやエスプレッソ、フレンチプレスなど、気分に応じて楽しんでいます。
寒くなってきたら、あたたかいカフェラテやカフェオレも登場しますね。ミルクを足しても選ぶ豆や抽出方法によっても味がだいぶ変化しますので、自分好みの味を探求するのも1つの楽しみです。
私にとって特別に感じているのは朝のコーヒー。
早朝の静かなキッチンでゆっくりコーヒーを淹れることほど、清々しい気分になれるものはありません。BGMは好きな音楽だったり、鳥の声や潮騒などの自然音だったり。
我が家は海辺の田舎町で周囲に何もありませんが、有難いことに自然豊か。コーヒーを淹れる時間帯には、黎明の変化する海空の風景も楽しめます。

コーヒーの抽出方法はスタンダードなペーパードリップ。
最近愛用しているドリッパーは、ハリオのV60で、細口のサーバーで3回に分けてゆっくりお湯を回しかけます。豆はガラポン抽選機のような手廻し焙煎機で焙煎したもので、焙煎度と味は自分好みに仕上げています。
ドリップ豆が膨らむ音まで鮮明に聞こえる静けさの中で、ゆっくりコーヒーを淹れる時間は最高に贅沢です。

私がコーヒーに魅せられて早20年が経ちます。何気なく始めた趣味ですが、まさかコーヒーから人生を学ぶとは思ってもみませんでした。
思い返すと、インスタントコーヒーに慣れきっていた私にとって、新鮮な豆で淹れたコーヒーのおいしさは衝撃的でした。その後、自分で焙煎してみようと思い立ち、自作の空き缶焙煎機で初めて焙煎した豆のおいしさ。今も忘れられません。
そしてある日、同じ豆でも淹れ方次第で味が全く変わることに気づいたんです。丁寧に淹れるコーヒーは味わい深く、上の空で雑に淹れると味気ない。まるでコーヒーに、どんな気持ちで淹れているのかを見透かされているようでした。集中して何度もドリップしているうちに、不思議と自分の心の状態に気づく感度と余白も持てるようになっていました。
仕事に追われていると、忙しさでいっぱいいっぱいになりますが、コーヒーを淹れると心に落ち着きと余白が生まれます。そして、一瞬にして日常を非日常に変えてくれるのがコーヒーの香り。
何にも勝る自然のアロマです。
私にとってコーヒーは、手軽に味わえる非日常と心の余白みたいなもの。身近な物でいつでもこんな瞬間が得られるのは、嬉しいことです。

機嫌良く、気持ちよく生きていきたい
ーー@ mocha_kurashiさんのマイルールは?
マイルールというほどではありませんが、常に意識しているのは1日を機嫌よく過ごすことです。
私にとってそれを実現する大切な時間帯は朝。朝の気分が1日を作るといっても過言ではありません。いつも日の出前に起きて、動き始めます。
起床後一番最初にやるのは、リビングの窓を開けること。新鮮な空気を感じると、ぼんやりしていた頭がすっきりします。それから座禅を30分。これは20年ほど継続している習慣です。
寝起きの丸まった背筋を伸ばし、ただ呼吸を感じるだけですが、心身共に深いリラックスが得られます。それから、丁寧にコーヒーを淹れる。
朝一番に心身を整えて、目覚めのコーヒーを飲むだけで、驚くほど気持ちが上向きになるんです。どんな気分でスタートするかで1日の質もだいぶ変わります。

ーー素敵な⼤⼈とは?
「大人げない大人」です。
童心を忘れないというか、自分らしく、あるがままに生きてる人ですね。大人になるにつれ、我慢や同調する事に慣れていきますから、自分の気持ちに正直に生きられなくなるものです。
周囲との調和が良しとされる世の中で自分の心のままに生きるには、ある種の強さ、ユニークさ、人生哲学が必要だと思うんです。
今まで出会ってきた素敵な大人は皆、そうでした。
何かをやるときも、「意味のあること、お金になること、将来に繋がること」といった打算ではなく、「ただ純粋に楽しいから、好きだから」そんな理由だけで、何かに没頭できる人はとても魅力的です。
ですから「なんでそんな変なことやってるの?」誰かにそう言われることがあったとしたら、それは素敵なことかもしれません。
世間一般の価値基準からはずれた、自分だけの価値観で生きている大人の証ですから。何かに没頭する大人げない大人が増えると、社会に漂う閉塞感もゆるむのではないでしょうか?
私もそんな大人の一人でありたいものです。
ーー1 ⽇にあともう5分あったら?
なにもしないと思います。(笑)
普段はとにかくいろんなことをしすぎてますから。私たちは、何かをすることには慣れてますよね。リラックスするのも、温泉に行く、映画を見る、おいしいものを食べに行くだとか、能動的なことはわりといつもやってます。
ですが、何もしないでいるのは不得意です。
たった5分でも、5分あったらスマホを見るとか、メール返そうとか、そわそわして、何だか落ち着かない。そんな人も多いのではないでしょうか? 私も気づくとそんな風になっているときがあります。
1日5分でもなにもしない時間をつくれば、心のスピードも今よりはゆっくりになりそうなので、できるだけぼーっとしてみたいです。
何かをやって得るものより、あえて「何もしないことで得られるもの」が、今本当に必要なものなのかもしれません。
@ mocha_kurashi
独学にてコーヒーの自家焙煎や自家製パンを研究。YouTubeをはじめとするSNSでその様子を発信する。現在、YouTube登録者は22万人を突破。オリジナルブランド「コーヒーのあるくらし」にて自家焙煎珈琲豆やオリジナルグッズのデザイン・販売をする。著書に『今日もコーヒーを淹れて』。