「コーヒーを飲むと目が覚める」
それにはカフェインが関係しているということは、広く知られています。では、体に入ったカフェインは、実際にはどうやって私たちの体に働きかけ、眠気を飛ばしているのでしょうか?
カフェインが取り除く「眠気」の正体

カフェインの作用には、覚醒効果と集中力向上、利尿作用などがあり、そのうちもっとも広く利用されている効能が眠気覚まし。その仕組みを理解するには、まず、眠気とは?から。
眠気を引き起こす「睡眠物質」。このうちの一つで、カフェイン摂取によって左右される睡眠物質が「アデノシン」と呼ばれるものです。
日常生活において、私たちの体がエネルギーを使うと、その代謝の副産物として生まれるアデノシン。脳の中枢神経に作用し、鎮静・睡眠を引き起こす性質を持っています。一定の量働いた体にはアデノシンが蓄積され、それを感知するアデノシン受容体(レセプター)と結合することで、眠気や疲労感が感じられるという仕組みです。この結合が遮断されると、神経の興奮が引き起こされます。
カフェインは眠気を「消す」のではなく感じにくくさせる
そこで登場するのが、カフェイン。カフェインの化学構造はアデノシンに似ているため、アデノシンの代わりに受容体に結合することで、アデノシンの結合を遮断し、眠気を感じにくくするのです。
カフェインの効果は、摂取してからおよそ30分で発揮され、個人差はありますがおよそ2〜8時間で徐々に減って行きます。
アデノシン受容体の感受性には遺伝子によって差があり、これがカフェインへの感受性の個人差に関係しているのではと考えられているそう。
カフェインでブロックされた眠気は、もともと体を適切なタイミングで休ませる目的もあるもの。カフェインを摂取し続けても、疲労自体がなくなるわけではありません。適度な睡眠のためにも、自分の体に合ったカフェインの量やとりかたを知っておきましょう。
「カフェインのとりすぎ」とは。どれくらいの量が「過剰摂取」?

上手に活用すれば様々な良い効果をもたらしてくれるカフェイン。ですが、何事もとりすぎは良くないもの。では、どの位の量を摂取すると「カフェインのとりすぎ」になるのでしょうか?
欧州食品安全機関(EFSA)では、妊婦を除く健康な大人の場合、1日におよそ400mg程度までの摂取であれば、習慣的にカフェインをとっても健康リスクにはつながらないとしています。これはおおよそ1日にコーヒー600~700ml (マグカップ2〜3杯分)程度。ただし、カフェインはお茶やエナジードリンクにも含まれていることに注意が必要です。それぞれの飲み物にどのぐらいカフェインが含まれているのか、例を見てみましょう。
コーヒー | 60mg/100ml | (浸出法:コーヒー粉末10 g、熱湯150 mL) |
エナジードリンク | 200~300mg/100ml | |
せん茶 | 20 mg/100 mL | (浸出法:茶葉10g、90℃湯 430ml、1 分) |
紅茶 | 30mg/100ml | (浸出法:茶葉5 g、90℃湯360 mL、1.5~4 分) |

飲まないとイライラする「カフェイン依存」ってあるの?
脳の報酬系に直接作用するドラッグと違い、依存性はないと考えられているカフェイン。ですが、長い間繰り返し摂取し続けることで、アデノシン受容体の感度が上がり、耐性が生まれることが知られています。また、自然と分泌されるアドレナリンの量も低下するとも考えられています。
これにより、習慣的にカフェインを摂取している人が急に摂取を止めると、イライラや頭痛といった不快な離脱症状が感じられるように。これは、徐々に摂取量を減らすか、数日間の離脱症状を耐えれば改善すると言われています。
また、個人の感受性によっては、カフェインを摂取することで不眠や不安感が引き起こされる場合も。カフェインの効果と作用を正しく理解して、自分に合った量や方法で、美味しく楽しみたいですね!
参考資料:
連載 睡眠の都市伝説を斬る 第57回 眠気の正体
アデノシンA2A受容体の研究
ネスレインタビュー第10回 コーヒーと健康 〜カフェインと脳の働き〜
日常生活の中におけるカフェイン摂取 -作用機序と安全性評価-
カフェインの過剰摂取について