名古屋市営地下鉄の東山線・藤が丘駅近くにあるのが、”自家焙煎スペシャリティコーヒー店「FREAK COFFEE ROASTERS」だ。「FREAK(フリーク)」とは、熱狂的な、異常、変人、といった意味合いがあり、多くのコーヒーフリークを輩出するというのが同店のコンセプトだ。名古屋はスペシャリティコーヒーを扱うのに向いていない、そんな声も聞こえてくるなか、あえてこの地に店を構えた同店。2021年10月オープンから1年を経て、StoreManagerの下川修平さんに現在地を聞いた。

最もよく聞く注文は「酸味が少ないもの」
愛知県をはじめ、名古屋でも、浅煎りコーヒーにこだわって出しているお店は少ないです。この近くでも2、3店舗といったところでしょうか。名古屋はモーニングのイメージもあるかと思いますが、かなり喫茶店文化が成熟しています。一人でゆっくり過ごしたり、仲間と一緒におしゃべりしたりと、コーヒーが主役になるシーンが少ないんですね。また、ここの水は柔らかいので、浅煎りコーヒーに向いていないとも言われています。

僕、元々は製菓学校の出身。卒業後は東京や愛知のホテルで働いていました。ケーキやスイーツの研究をするために、休日にカフェ巡りをしていたのですが、いつも一緒に注文するコーヒーとのペアリングの奥深さが、徐々に気になっていったんですよね。気づいたらすっかりコーヒーの沼にはまってて(笑)。ホテルで調理をしていては、コーヒーを通して、なかなかお客さんと接することは叶いません。そんなこともあって、退職し、スターバックスやタリーズコーヒーで働きました。海外のお客様も多かったので、彼らの要望に応えていく仕事は楽しかったですね。お客さんと一緒にコーヒーを楽しんでいました。その後、バリスタ兼バーテンダーとしてカフェで働くように。

コーヒーがかなり身近になったところで、まだこの地域にないコーヒーを広めたいと思うようになりました。それが浅煎りのコーヒーで、「FREAK COFFEE ROASTERS」の設立となったのです。現在、3人のチームでお店を運用しているのですが、メルボルンやロンドンでバリスタとして活躍しているメンバーや、人徳のある焙煎者など、個性豊かなメンバーと浅煎りへの理解を深めてもらおうと頑張っています。

お店にいて、一番よく聞く言葉が、「酸味がないのはどれですか?」ですね。笑
そんな時は、「酸味特性を生かした浅煎りコーヒーしか扱っていない」とご説明差し上げます。ただ、ここからが大事で、皆さんの苦手な酸味を聞いていくと、意外と抽象的なものが多いのですよね。つまり、酸味を深く理解できていない。ですので、そういった酸味のイメージを覆すようなフレーバーを複数ご提案させてもらいます。浅煎りコーヒーを飲んでいただいて表情が変わるシーンを、これまで何度も見てきました。酸味があるからダメというものではありません。

僕は、製菓出身ということもあって味わいの研究も好き。豆のフレーバーについては、言葉を尽くしてご説明します。良い意味で期待を裏切りたいんですよね。浅煎りのイメージをいかに変えていけるか、名古屋でスペシャリティコーヒーのお店を継続するのは、こういった啓蒙も必要なんです。

我々の研究も欠かせません。このあたりは水が柔らかく、そうであるとコーヒーの味が出にくい。味を出そうと豆を細かくすると、酸味が嫌いな人には合わない味になってしまいます。そんな時は、コントレックスなど使って、硬度を高めたりしていますね。できることはなんだってしたい。

以前、訪れた大阪のaoma coffeeは、甘みがあって非常に驚きました。これまで、コーヒーで甘さを感じたことはなかったからです。「FREAK COFFEE ROASTERS」でも、そういった驚きと共に新鮮な体験を提供できれば。名古屋でスペシャリティコーヒーを醸成させるのは簡単ではありませんが、可能性があるように感じています。できる限り、丁寧な言葉でコーヒーの魅力をお伝えさせていただき、少しでもスペシャリティコーヒーの理解が広がると嬉しいですね。

FREAK COFFEE ROASTERS