「ライフスタイルそのものを映す、バリスタという仕事」小田政志さん【KOHII meets Barista】

コーヒーと真正面から向き合い、業界の前線を走るバリスタさんたち。その姿をKOHIIの若手クリエーターたちからコラム形式でお届けする企画です。

日本でスペシャルティコーヒーの人気店を立ち上げてきた黄金世代から最近お店に立ち 始めた新世代まで、コーヒーを通してバリスタさんのキャリアストーリーを見つめたり、今後の展望について伺っていきます。

コーヒーLOVERならではのお話やバリスタという職業の魅力など、直接会いに行けなくても、ワクワクできるような出会いをこの企画でお楽しみいただけると嬉しいです。

小田政志:バリスタ / コーヒーコンサルタント / Founder of Swim

By KOHII Creator@Saori

筆者がよく行くカフェNo.(東京・代々木上原)にロースターとして豆を卸し、バリスタとしてコーヒーの味を監修している小田政志さん。この企画で、一番最初にお話を伺いたかった方です。今回は、小田さんが立ち上げたブランドSwimの焙煎所でお話を伺わせていただくことにしました。

1階には大きな焙煎機や作業台、そして小田さんのお気に入りだというレコードプレイヤーも。どこかレトロな空気が流れていて、初めて行くのにとても心地のいい空間でした。2階のオフィスで、小田さんに淹れていただいたコーヒーを飲みながらお話を伺いました。

バリスタは「タレント性のある仕事」

――コーヒーを淹れるときに大切にしていることはありますか?

いやな味が出ないようにしていますね。出ちゃうときもあるんですけど、それを出ないようにどうするかを試行錯誤しています。苦味・渋み・酸味・あと青臭さ。最近の焙煎の傾向では、最初は美味しいけど、すこし経つと青臭さがでる場合があるから、それが出ないよう工夫していますね。

――最近はまっている豆や淹れ方、器具はありますか?

ドリッパーだとHARIOのSwitchとか使いやすくて、良いですよ。家庭でもいろいろ可能性が広がる器具なので、おすすめです。

――小田さんにとってバリスタはどんなお仕事ですか?

タレント性のある仕事だと思います。特に昔はそうだったと思うんですけど、「この人がいるからコーヒーを飲みに行きたい」って思われるバリスタがいいなと思います。お客さんがそのバリスタを信頼していれば、仮にそのコーヒーがまずくても、おいしいと感じるものだと思うんです。もちろんまずいものは作っちゃダメなんですけどね。そういう信頼関係の上に成り立つものだから、カウンターでの立ち振る舞いもそうなんですが、それに加えて、バックグラウンドだったりライフスタイルそのものも、お客さんとの信頼関係の大きな部分だと思っています。

18歳でコーヒーの道へ

――コーヒー業界に入ったきっかけとこれまでの経緯を教えていただけますか?

18歳からコーヒーの世界に入りました。元々アートが好きで、東京のデザイン専門学校に行くお金を貯めるために近くの喫茶店で働き出したのが、コーヒーとの最初の出会いです。その喫茶店はたまたま自家焙煎の店だったので、種類もたくさんあり色々試して飲んでいくうちに、コーヒーって面白いなぁと思うようになったんです。

そこで働き出して1年経った頃、エスプレッソマシーンを入れた2号店が出来ました。どうすればラテアートを上手く作れるようになるか、美味しいコーヒーを提供できるようになるかを考え出したとき、地元島根にカフェロッソというすごい有名なお店があって。当時日本で最も有名なエスプレッソのお店だったんです。オーナーは3回日本チャンピオンになっていて、世界でも2位の実力の持ち主。弟さんも同じくらいの実力で、日本2位の方だったんですが、運良く弟さんがやっているカフェビータで働かせていただくことになりました。この出会いが、コーヒーを生業にする大きなきっかけになりました。

カフェビータは大会とかにも出るようなお店で、すっごく厳しかったです。僕、この店で一度もお客さんにコーヒーを作らせてもらえなかった。僕の1年後に入ってきた女の子はすぐにコーヒーを作っていましたけど、当時の僕は不器用だったんです。毎日怒られて、何回もやめようと思いましたけど、何くそっていう気持ちでなんとか4年間続けました。

その後一度東京を見ようと思い23歳で東京に出てきて、ベアポントエスプレッソというその当時すごく有名だったお店で働き始めて、2年半そのお店にいました。

海外で即戦力になるために

ずっと海外に行きたいと思っていましたが、下積みがないと向こうで通用しないので、即戦力になれるように日本で一生懸命勉強しました。26、27歳になって、知識も経験もたくさんあったし、テクニックにも自信があったので、もうそろそろいいかな、とコーヒー文化が栄えているオーストラリアに荷物とサーフボードを持って行きました。

ゴールドコーストから寝台列車でシドニーに向かったのですが、朝起きたら、荷物が全部盗られていて、サーフボード以外なにも残っていなかったんです笑、身一つで本当に何もない状態からのスタートでした。

シドニーには、ベアポンドで知り合ったバリスタの友達がいたので、数日間泊めてもらうことに。ある日彼が働いているカフェに行ったら、その店のオーナー兼ロースターが来ていて、「なかなか店に来る人じゃないから、仕事をオファーするなら今だぞ!」と友達に言われてお願いしてみたら、トライアル後に働かせてくれることになったんです。そこで、初めて焙煎を経験しました。

日本ってバリスタが働いて、ロースターが豆を焼いてっていうのが多いじゃないですか。でも向こうって1つのチームとして成り立っていて、チームにデザイナー、メカニック、サプライヤーがいたり、ロースター内で各セクションに最適な人が分けられていました。卸先のケアもすごくちゃんとしていて、コーヒーだけじゃない、働き方や、組織体制のことも学べました。

イギリスで発見したコーヒーの新たな魅力

オーストラリアで働き出して2年経ったタイミングで、その会社がイギリスでも事業を始めたんです。イギリスのボスがたまたまシドニーにきていて、働きたいですと話したら、イギリスに行けることになりました。

イギリスの会社は僕含めて3人。平日の3日間は焙煎、残りの2日間は配送やお客さんの全部のお店をまわって、コミュニケーションと簡単なトレーニングと豆とマシンの状態を見に行くという生活でした。各地のお客さんのところへ行ったり、豆を運んだりというのはなんだか自由がありました。

イギリスはミネラルを含んだ硬水で、エリアごとに味が違います。日本は水が恵まれているからそういうことはないんですが、ヨーロッパは地域によって全然味が違ったので、水に合わせてマシンや焙煎を調整したり、そのついでにお店の営業自体を手伝ったり。その時、こういう関わり方をしているロースターは日本ではまず無かったと思います。コミュニケーションをすごく大切にしていて、お客さんたちの名前や国や性格もメモに書き留めたりもしていました。

少ししてからは、卸先のお店の立ち上げの仕事が増えました。マシンのセッティング、バーのレイアウト、バリスタのトレーニングをするように。その頃、オーストラリアの友達がイギリスに来て、彼は自分でマシンを買って車に積み、道端でコーヒーを手売りしたり、フェスで豆を売ったりしていました。そこに僕もジョインして、一緒にポップアップやフェスを回るようになってから、すごい勢いで大きくなっていったんです。こういう働き方もあるんだなって、コーヒーの新たな魅力を発見しました。

イギリスから帰国した時、お店をやるのは違うなと思ったんです。やりたいお店の理想はあるんですけど、その理想が強すぎて、まだタイミングが違うなと。ちょうどその頃にNo.という代々木上原にあるカフェの立ち上げの話をもらったので、自分がロースターとして立ち上げて一緒に仕事をしようと思い、Swim を立ち上げました。

「コーヒーがあったおかげで、人生が豊かになった」

――これからの展望を教えていただけますか?

僕は今36歳ですが、まだ全然海外に行きたくて、諦める必要はないと思ってやっています。それを逆算して今の自分がある感じ。資金とか働き方とか組織のあり方とかツテとか、色々必要なんですけど、海外に目標をおいて、最短距離でいけるようにやっています。オーストラリア、イギリス、アメリカ、本当たくさんの人と会ってきて、今でもよく連絡を取るんですけど、お互いの拠点がありつつ、お互いに繋がれるような仕事を本当に実現したいなと思っています。夢みたいな話なんですけど、例えば半年日本、その後は半年ハワイ、その後は半年パリみたいな生活をしたいですね。

身近な目標だと、今の大森南から違うところに焙煎所の拠点を変えてもっと理想の形にしたいですし、働き方も確立させたいです。

――若い世代に対してアドバイスをするとしたら何を伝えたいですか?

新しい形とかスタイルとか味とかを作る人たちが出てきても良いなと思います。自分たちの味を、型にはめずに表現する人が出てきてもいいなって。

――幅広くコーヒーと関わられてきた今の小田さんにとって、コーヒーはどういうものですか?

自分の人生とか生活の可能性を広げてくれているもの。今ちょうど人生の半分をコーヒーと歩んでいるんですが、チャンスをもらっているし、これからやりたいことも持っていられたりとか、コーヒーがあったおかげで、自分の人生が間違いなく豊かになっています。

――これから日本のコーヒー業界には、どんなマインドが必要だと思いますか?

あんまり色んなことを気にしないことです。僕もライバルはいっぱいいるけど、それを気にしていなくて。例えば僕の場合、コーヒーの中間層を変えたいと思っています。スペシャリティコーヒーを飲んでくれるお客さん、その次にいるUCCとかスターバックスとかを飲む中間層の質を少しでも上げたいです。なので、企業案件をやったりもするんですけど、僕はそれを悪いことだと思っていないし、大勢の人が美味しいコーヒーを飲めるようになったり、もっとコーヒーを好きになるきっかけを作るのはいいことだと思っています。スペシャリティコーヒーだけに留まらず、広いビジョンを持って、周りは気にしないことが大事です。

――小田さんは、サーフィンをやられていますよね。サーフィンとコーヒーはなにか繋がるものはありますか?

マインドフルネスですね。自分と向き合う時間。サーフィン中ってなにも考えないようにしているんです。そういう場所にいるときは、波と自分だけに集中する。コーヒーも一緒で、その場所と自分だけに向き合うっていうことかなと思っています。あと、続けることは大事ですね。サーフィンもコーヒーも、辞める人ってけっこう多いんですよ。でも、ある程度してから見える景色って絶対にあるから、一回続けてみることは大事だと思います。

あとがき
好奇心と向上心を持ってリスクを恐れず行動し、然るべきタイミングでやってくるチャンスをしっかりと掴んできた小田さん。目標を見据えて経験値を高めていく、当たり前のようで当たり前にはできないこの努力をし続ける小田さんの姿勢に、私も自然と背筋が伸びて、頑張ろう!とパワーをいただきました。

<プロフィール>

小田政志
バリスタ / コーヒーコンサルタント / Founder of Swim

オーストラリア、イギリスのコーヒーロースターで、焙煎やクオリティーコントロール等を行う生産部門で勤務。イングランド南部やロンドンの卸先のコーヒートレーニング、レシピ作成、様々な店舗の立ち上げを行う。ヨーロッパ最大規模であるロンドンコーヒーフェスティバル等、様々なイベントにバリスタとして参加。現在、東京を中心とした様々なコーヒーショップとコラボレーションしながら、ゲストバリスタとして活動。また、新規店舗立ち上げ時のコーヒー器具選定やバリスタトレーニング等、コンサルティングの活躍の場も広げている。

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