「フィーカ」の語源はコーヒー
「FIKA(フィーカ)」はスウェーデン語の「Kaffi(コーヒー)」のアルファベットをひっくり返して生まれたと言われていて、甘いものを食べながらコーヒーを飲むというスウェーデンのコーヒー文化を表す言葉です。特に決まりはないそうですが、毎日午前10時と午後3時に時間を設けることが多いそうです。

以前仕事で地元のとある陶磁器メーカーの工房を訪れた時に、黙々と作業に集中していたはずの職人さんたちが何の前触れもなくパタリと止めて持ち場を離れるので、何事だ?と驚いたことがありました。時計の針はちょうど10時。フィーカの始まりの時間でした。
日本では、淹れたてのコーヒーをデスクの傍らに置いて“ながらコーヒー”をする人を見かけますが、スウェーデンでは職場でも学校でも、時間になったら一斉に仕事や勉強の手を止めて、みんな集まってコーヒーブレイクを取ります。その工房ではお茶当番の人がコーヒーを用意して、思い思いにおやつを持ち寄っていました。定番は、みんな大好きカルダモンロール!深煎りのコーヒーによく合います。

他にもシナモンロールにクッキー、朝食代わりにサンドウィッチを頬張る人もいて、週末のキャンプの話やら応援するサッカーチームの勝敗やらで、束の間の談笑をしていました。
学校に「おやつの時間」があるのが意外でしたが、もし朝食を食べられずに登校してくる子どもがいたとしても、午前のフィーカで軽い食事を摂らせることができる。大学まで学費が無料、給食も無料という国の政策からもフィーカが担う大きな意味合いを感じました。
「ちょっとお茶でもどう?」に隠された意味
フィーカは、仕事の合間のリフレッシュの目的の他に、周囲と円滑な関係を築くきっかけという意味があり、スウェーデンには「フィーカしない?」という誘い文句があるそうです。
日本でもよく似た言葉がありますよね。誘ったほうも誘われたほうも、一緒にお茶を飲むことだけが目的ではないだろうと含みを持たせる魔法の言葉が。遠い異国の地でもコーヒーがコミュニケーションのきっかけになっていると知った時、なんだか身近に感じました。
打ち合わせをするほどでもないけれど確認したいことや、状況把握のために聞いておきたいことなど、職場での意思疎通を気軽にできるメリットは計り知れません。スウェーデンに残業という文化がなく、ワークバランスがいいのは、フィーカのおかげかもしれませんね。
その陶磁器メーカーの工房でも、時間になってもフィーカの部屋に降りて来ない若手の子に向かって、ベテラン職人さんが「おやつの時間、終わっちゃうわよ〜」と声をかけに行っていました。シリアスだけが正解じゃないんですよね。相手は人間だし、仕事も暮らしの一部。今日は顔色が優れないなと、声にならない声を拾いながら会話を楽しめるといいですね。便利が増えて無駄を省きがちですが、あるべき能力を失っているかもしれません。
話せるムード作りのスキル、磨けていますか?

執筆:naoko tsutsumi
編集者。関西と東京の出版社勤務を経て、フリーランスのエディター/ライターとして活動を開始。ヨガやボディーワーク、旅の雑誌づくりに携わる。お気に入りのコーヒーカップ&ソーサーはグスタフスベリ社のマチルダ。関西生まれシンガポール在住の猫飼い。