本を片手に、ちょっとゆっくりコーヒー時間を。岐阜県・多治見【喫茶わに】

岐阜県・多治見駅から5分ほど歩く場所にある、「喫茶わに」。もともと時計店だったビルをリノベーションしたレトロな外観が、目を引く。喫茶わにがあるのは、このヒラクビルの1階。隣には、ひらく本屋という本屋がある。ということは、購入したてほやほやの本の手触りを感じながら、新しい本の香りをほのかに感じながら、コーヒーが楽しめるというわけだ。今回はそんな、ほっこりとした休憩タイムが過ごせる「喫茶わに」の店長、田平沙織さんに話を聞いた。

地元の人が集い、お話できる場所に

このお店に立つ前は、ドッグフードを扱う会社で商品開発をしていました。獣医学部を卒業し獣医師になりたかったのですが、動物の病気には獣医師では治せないものもたくさんあります。そこで動物が日常で摂取する栄養についてもっと勉強したいという思いが強くなり、獣医学から獣栄養学へとシフトチェンジ。……というわけで、以前は飲食業とは全く畑が違うところにいましたね。

ただ、将来お店を開きたいという漠然とした夢もあって。当時ドッグカフェが流行っていたりしたので、いいなぁと思っていました。小学校の頃からキッチンに立って料理を作っていたし、中学校になると、タッパーに作ったチョコレートケーキを詰めて友達に配り歩くみたいなことをする人間だったので(笑)。料理することが好きだったんです。

いろんな人生の転機があり前の会社を辞め、地元の多治見に帰ってきました。そこで飲食店の求人を探していたところに、「カフェ温土」の求人を見つけ、ダメもとで飛び込んでみました。それが、飲食業に入る最初のきっかけ。「カフェ温土」の店長をしながら、このヒラクビルを作るプロジェクトに携わっていました。そんなある日、ヒラクビルの中で店を開かないかという話をいただいて。そうして、「喫茶わに」を作ることになったのです。

喫茶わにの「わに」には、いろいろな思いが込められています。一つは、店にある円いテーブルに人が座ると「輪になる」ようになっていて。「輪に」と「わに」をかけています。また、ワニみたいに口を大きく開けて、楽しくお話をしてほしいという思い。お店に来て話をしたり交流をしたりできる場所であってほしいという思い。また、このビルは「ヒラクビル」という名前なのですが、その前は「ワタナベビル」という名前で100年ほどの歴史のある場所でした。そのワタナベビルの歴史を残すために、「ワタナベビルにできた」というダジャレで「わ」と「に」を残して、わに。

……とかいいつつ、最初は名前が全く決まらなくて。どうしよう、と思い悩んでいたときにふっと目線の先にあった本棚で『じょうずなワニのつかまえ方』という本が目に入って。面白い本で愛読書だったんですけどそれを見つけたときに、「『わに』はどうですかね」とまわりに提案したんです。最初はみんな「??」となっていたのですが、「確かに『わに』ってないねぇ、いいかも」となって。そんなふうに店名の「喫茶わに」には、いろいろな由来があるんです。小さな子も呼びやすい名前なのも、素敵かなと思います。

お客さまとのコミュニケーションで大切にしているのは、「誰に届けるか」をちゃんと考えること。届ける相手が誰かというのは、どの仕事をするにも一番念頭に置いています。「喫茶わに」の場合は、常連さんが「あれが食べたい」って言っていたなぁと思ったら、それを作っておこうかな、とか。「誰が受け取ってくれるか」というのを、いつでも忘れないようにしています。

コーヒーは小さな頃から飲んでいて好きだったのですが、「喫茶わに」を初めてからは、コーヒーをお店の主軸に置いていることもあり、さらにコーヒーの味わい方が変わりましたね。今お店では扱っているコーヒーは、地元・多治見で自家焙煎されている「Jikanryoko」さんというコーヒー屋さんから仕入れています。お店オリジナルの「わにブレンド」もお願いして作ってもらっていて、とても人気なんですよ。

私にとってのコーヒーとは、「スイッチ」です。一日に、結構な量を飲むんですよ。朝起きて飲んで、店に来て仕事を始めつつ飲んで、ラテアートの練習がてら飲んで。ディナータイムになる前に飲んで、家帰って飲んで……となると、1日5杯ぐらいは必ず飲んでいますね。それが全部、何かの切り替えになってるんでしょうね。「コーヒーを飲んで頑張らなきゃ」と飲むオンスイッチでもあるし、「コーヒーを飲んでゆったりしよう」と飲むオフスイッチでもあります。

コーヒーの味わい方っていろいろあると思いますけど、「こっちの方が好き」とか「なんか今日のコーヒーおいしい気がする」って思えたら、じゅうぶん素敵だと思います。私がおいしいと思うものや、誰かがおいしいと言っていたものを、また誰かに「このコーヒーおいしいよ」と、すすめたくなります。「喫茶わに」のコーヒーも、ぜひ飲みに来てもらいたいですね。





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企業でクリエイティブディレクターとして働く萩原幸也さん。これまでに、数多くのサービスのブランディングや宣伝を担当してきた。本業の他にも、武蔵野美術大学の客員研究

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