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  • 「尾瀬の雪原で飲んだコーヒーは格別」保健師:灰原綾香【私のグッドロケーション for COFFEE】#2

    「尾瀬の雪原で飲んだコーヒーは格別」保健師:灰原綾香【私のグッドロケーション for COFFEE】#2

    豆にこだわる人がいれば、焙煎にこだわる人もいる。そして中には、「飲む場所」にこだわる人がいる。本連載では、お店や自宅とは違う、自分だけの⻘空カフェについて「外で飲む派」のみなさんにインタビュー。コーヒーを飲みたいのは、あんな場所やこんな場所、まさかまさかの場所まで。

    今回は歯科衛生士、看護師を経験し、現在は保健師として働く灰原綾香さんにとっての、コーヒーを楽しむ「グッドロケーション」について聞いた。

    あなたは、どこでコーヒーを飲んでみたいですか。想像しながらお読みください、爽やかなコーヒーでも飲みながら。

    「尾瀬アヤメ平の雪原で飲んだコーヒーは格別」

    ――理想的なコーヒーシーンは?

    山で飲むコーヒーは格別です。

    山頂からの景色を見ながら飲むコーヒー。テント場でひと段落してから飲むコーヒー。仲間とテント泊で雑談しながら飲むコーヒー。特に、冬季の登山で真っ白な雪の上で淹れるコーヒーなんて、最高のロケーションです。そんな中でも、残雪期の尾瀬アヤメ平の雪原で飲んだコーヒーは格別でした。

    ――山でコーヒーを飲むとき、どのように過ごしますか?

    山頂で飲むときは山ご飯でお腹を満たし、ひと段落したときが多いです。ミルとドリッパーと豆、それに甘いものを準備してあります。そして最高のロケーションを愛でながら豆を挽きます。

    ――コーヒーの淹れ方のこだわりは?

    普段エチオピアやイルガチェフェなど、浅炒りで芳醇な香りのするコーヒーが好きでよく飲むのですが、山頂だとどうしてもお湯の沸点が下がってしまうため、酸味が強くなりがちです。なので、いかにお湯やカップの温度を下げないように淹れるか。お湯を温めなおしながら淹れることさえあります。

    ちなみに、カップは保温性のあるものを使うこともあれば、軽量のチタンカップを使うこともあります。諦めて、深煎りの豆を使うこともあります(笑)。

    「何も考えないでコーヒーのおいしさを味わう」

    ――コーヒーシーンに持っていくものは?

    小型のスピーカーを持って、お気に入りの音楽を聴きながら飲んでいます。あとは、横に美しい人がいれば完璧ですね(笑)。

    ――そのときどんなことを考えて飲むんだろう?

    普段は仕事と育児に追われる毎日なので、何も考えないでコーヒーのおいしさを味わい、良い景色を眺めて自然を堪能したいです。

    ――あなたにとってコーヒーとは。

    自分の時間に飲んでいるので、リラックスできる薬みたいなものです。コーヒーが飲める幸せを感じます。

    その中で、cafeや人との出会いも多くあり、新しい発見もあり、良い刺激にもなっています。

    灰原綾香

    歯科衛生士、看護師を経て現在は保健師として働いています。プライベートはシングルで育児中です。仕事も育児もなかなか忙しくしていますが、趣味もそれなりに楽しんでおり、登山、カメラ、スノーボード、コーヒー、アニメとアクティブなオタクです。たくさん資格を取りましたが、いつか自分の好きなことを仕事にするのが夢です。“強引g my way”と称して人生を楽しく生きています。

  • KOHII PEOPLE #16 インスタグラマー:@kasumi

    KOHII PEOPLE #16 インスタグラマー:@kasumi

    夫婦でコーヒーが好きという、インスタグラマーの@kasumiさん。家でゆっくりとコーヒーを楽しんだり、休日は夫婦でコーヒー屋さん巡りに出かけたり。写真も好きで、お家コーヒーの様子やカフェ巡りの写真などをインスタグラムに投稿。ゆくゆくはYouTubeなどでコーヒーのある暮らしを発信していきたいとか。

    そんな@kasumiさんの生き方の一端、そして、側にある“コーヒー”の存在について聞いた。

    目から味から。五感でコーヒーを楽しむ

    ーーどのようにコーヒーを楽しまれていますか。

    一口にコーヒーといっても、酸味の強いコーヒーから苦味の強いコーヒーなど、いろんな味のコーヒーがあります。大まかには浅煎り、中煎り、深煎りと分類されますが、同じ浅煎りでも飲んでみると全く違う味で。豆の煎り具合はもちろん、淹れ方や水、淹れる器具など、さまざまな違いで味が変わるおもしろい飲み物です。

    もともと豆がつやつやの深煎りが好きなのですが、最近は浅煎りの良さにも気付いてしまって。深煎りの豆はお気に入りのお店があるのですが、浅煎りはノータッチだったので豆迷子で死活問題なんです!(笑)

    コーヒーの楽しいところは自分好みの味を追及できるとこかなと思います。最近はいろんなお店がオンラインでも豆を販売してくれているので、調査の幅を広げやすい(笑)。好みの豆が見つかったら、今度は淹れ方の研究を。こうやってどんどんコーヒーの沼にハマっていくんでしょうね……

    コーヒーシーンで大切にしているのは、「目に入る情報にもこだわる」こと。味が好みということは大前提として、目から入る情報も味覚に影響すると思うんです。

    例えば、コーヒーを入れるマグカップ。適当なマグカップで飲むよりも、お気に入りのマグカップで飲むほうが、気分も上がります。コーヒーと合わせる食べ物にしても、買ってきたケーキをトレイのまま食べるのではなく、お皿に移して食べる。ひと手間かけることによって、満足度が何倍にもなるかなと思います。

    私にとってのコーヒーとは、気分転換のツールであり、体調を知る手段であり、家族や友人との会話の糸口でもあります。家事が一通り終わったとき、仕事から帰ってきた後、休憩したいときに欠かせないものです。ただ、もともと胃腸は強いわけではないのでコーヒーを飲みたいと思えないときもあります。もちろんそのときは飲まないのですが、コーヒーを美味しく飲めることは私にとっての健康のバロメーター。また、家族や友人もコーヒーが好きなため、コーヒーの話で盛り上がることも多々あります。出張のお土産で豆を買ってきてくれる友人もいたり、逆に私もプレゼントしたり。コーヒーは、人との縁も繋いでくれます。

    コーヒーがない生活が考えられない程、私にとってコーヒーはあって当たり前で、なくてはならないものです。

    自分の声に正直にていねいに暮らす

    ーー@ kasumiさんのマイルールは?

    朝一番に必ずするのが、起きてすぐ白湯を飲むことです。白湯は鉄瓶で沸かしたものを飲みます。もともとは水をコップ一杯飲んでいたのですが、鉄瓶で沸かした白湯なら自律神経が整い、鉄分の補給にもなると聞いて。何より、鉄瓶で沸かした白湯がおいしくて。まろやかになってすごく飲みやすいんです。良いことづくめなので、これからも続けていきたい習慣です。

    それと、これは最近気付いたことなのですが、出先から帰ってきたときにシンクに洗い物があるのがすごく嫌で。洗い物を終わらせてから出かけるというのは、いつの間にか自分の中でのルールになっています。

    ーー素敵な⼤⼈とは?

    自分の好きなことを分かっていて、それを全力で楽しんでいる人は素敵だなと思います。大人になれば好きなことに費やす金銭的な余裕はできても、時間的な余裕はなかったり。あるいは、好きだなと思うことにチャレンジする勇気がでなかったり。チャレンジすることは、年を重ねれば重ねるほど、難しくなっていく気がします。

    SNSで発信することが当たり前になっている昨今は、昔では考えられないほど簡単にいろんな国の方や幅広い年代の方と繋がることができます。その中で、自分の好きなことを全力で楽しんでいる方たちを見ると明るい気持ちになれるし、自分も頑張ろうと思えます。楽しんでいる人というのは、人にプラスの影響を与えられる。そういう方はとても素敵だなと思います。

    ーー1 ⽇にあともう5分あったら?

    自分にとって「心地よい」と思えることをしたいです。ヨガだったり、読書だったり。どちらも私にとって、自分自身を整えるツールです。ヨガだったら身体が、読書だったら心が整います。整えるためにすることはダラダラしても意味がないと思っているので、短時間で済ませます。

    ただ、「しないといけない」という義務にはしたくないなと。義務になると、自分が好きなことでも嫌と感じてしまうときもある。それはとてももったいないことだし、自分にとって何のプラスにもならない。なので、ヨガをするときもあれば読書するときも、いろいろです。

    あとはやっぱり、コーヒーを淹れてゆっくりしたい。これは5分の余裕がなくてもどうにかしてしていることなんですけど(笑)。それぐらい、コーヒーは私にとって欠かせないものなんだなと思います。

    @ kasumi

    趣味であるコーヒーを、趣味である写真におさめ、インスタグラムに投稿。自宅でゆっくり淹れて楽しんだり、コーヒー屋めぐりをしたり。ゆくゆくはYouTubeなどでコーヒーのある暮らしを発信していこうと思惑中。

  • 心に火をつける。ここでしか飲めない鮮烈なコーヒーに出合える場所【ignis】

    店名の「ignis」は、「ignistion」の造語。ignistionは英語で「天火」という意味がある。心に火を灯し、心をゆさぶるようなコーヒー体験を、という思いが込められている。店内は、白い。いわゆるコーヒーやカフェから連想されるイメージとは少し違うような、洗練という言葉がぴったりとくる都会的な空間だ。カウンターのみの造りは、まるでバーみたい。そして扱うコーヒーこそが、スペシャル中のスペシャル。いままで体験したことのないような、ワクワクが味わえるコーヒーばかり。今回は、そんな「ignis」オーナーの土橋永司さんに話を聞いた。

    生産者への敬意を込めて、希少コーヒーを楽しむ

    僕のコーヒー歴は、スターバックスから。カフェで働くっておしゃれでいいなって、中学生くらいからなんとなく思ってはいたんですよね。大学時代にスターバックスでバイトし、接客やサードプレイスの概念を学びました。

    ちょうど僕がスターバックスに入ったくらいのときかな、ラテアートの世界チャンピオンがアジアで初めて誕生して、世の中が第1次ラテアートブームでした。そこでラテアートに興味を持ち、日本チャンピオンがいる店で修行しました。そうするうちに、コーヒー自体に興味を持ち始めて。ブラックコーヒーを勉強するべく、バリスタ世界チャンピオンのポール・バセットによるエスプレッソカフェ「PAUL BASSETT」で働くことに。そこではコーヒーだけではなく、店の運営や人の育成を勉強しました。そのときのスタッフと一緒に立ち上げた「GLITCH COFFEE & ROASTERS」で5年ほど働いたあとに、「ignis」をスタート。2年くらいになります。4カ所でコーヒーを経験していますが、全部それぞれキャラクターが違う。客層も、雰囲気も、オペレーションの手際も。それ全てが、勉強で糧になっています。

    「ignis」の店名は、英語で点火の意味を持つ「ignistion」から名付けていて。昨今、スペシャルティコーヒーのお店が増えていますが、そこでもあまり一般流通していないようなよりスペシャルをお届けすることで、人々に新しいコーヒー体験、心に火をつけるような体験をしてもらいたい。そんな思いを込めています。

    それは、普段出せない世界最高峰のコーヒーであったりとか、オークションロットっていてその年の一番おいしい豆を決める品評会で1位になったコーヒーとか。過去最高金額で落札しているようなもの。うちでは、そういうコーヒーが飲めます。

    例えば、1杯1万円するコーヒーがあったり。そういう「ちょっとそんなの、体験したことないです!」みたいな感動的な体験を生み出せたら、と思っています。だから、近所の人がふらりと飲みにくるというよりは、わざわざ飲みにきました、みたいな人が割と多いですね。

    1杯1万円のコーヒーは、どんな味ですか?とは、よく聞かれますね。言うなれば、全く文句のつけどころがない味。このコーヒーは、エチオピアのオークションで落としたもの。エチオピアのコーヒーで人生が変わりました、という人は多いと思うんです。やっぱり唯一無二のパワーがありますよね。僕もそうでした。僕の人生を変えてくれた国・エチオピアになにか還元できたら、という思いもあります。コーヒーでできたお金で、学校や病院を建てたり、安全に飲める水を普及させる制度を作ったり。そういう気持ちは、ぶらさないようにしたいですね。エチオピア大使館から、感謝状もいただきました。

    そんな特別なコーヒーを飲む空間だからこそ、お店の雰囲気も他とは違うものにこだわっています。バーみたいでしょ(笑)

    毎月、満月の夜だけ、夜営業をやってるんです。夜中の1時まで。そのタイミングで何かしら、新しい企画をやっていて。カクテルグラスに「シグネチャードリンク」と呼んでいる、コーヒーを使ったアレンジドリンクを注いで、ちょっと違う雰囲気で提供したり。新しいドリップ方法で淹れたコーヒーを提供したりとか、ゲストバリスタ呼んでみたりとか。コーヒーという液体の風味を、こんなふうに表現したら面白いんじゃないかな、という挑戦ですね。

    僕がコーヒーをやっていて、こだわっていること。いろんなことがあるんですけど、生産者へのリスペクトは、絶対に大切にしています。僕が今、コーヒーしか出さない店で仕事がちゃんとできている。やりたくないことは、何もしなくていい。これってすごく、贅沢なことです。人生の働いている瞬間を全てコーヒーに注げるのは、それを生み出す生産者のかたの努力があるからこそ。彼らの努力ってすごくて。その結果が20年前じゃ考えられない、ものすごいレベルのコーヒーを生み出すことにつながっているんだと思います。

    ワクワクさせてくれるようなコーヒーが、毎年出てくる。その魅力を、伝えていきたい。僕と同じように感動してもらえる人を作っていくことを、ベースに考えています。

    コーヒーマニア向けのものだけど、そのよさを一番消費者に近い僕たちが価値にしていく。それは、言葉だけじゃなくて、ちゃんと数字として。例えば、働いてくれるスタッフの給料に反映させるとか。

    僕はずっとコーヒーをやっていたいから、僕が60歳になってても、ずっと立ってられる街がよかった。「あのじいさん、ずっとコーヒーやってるよね」みたいに言われても、しっくりくるような気がいいなと思い、ここ千駄木でやっています。クラシカルな古き良き空気がありつつも、裏路地に入ると新しいかっこいいものがある。そんなこの街が好きです。

    僕の理想のコーヒーの楽しみ方は、夜飲むこと。僕は早起きが苦手なので、朝コーヒーを飲むというよりは、夜仕事終わった後、深夜でも、特別なコーヒーをゆっくり飲むのが好きですね。音楽を聴きながらコーヒーを飲んで、妄想する時間。そんな時間が好きです。

    プライベートで飲むときは、あえて計量などせずに、そのときのテンションで感覚で淹れてみる。やんちゃな感じで、少年の心を忘れずに。ここは逆に数字にとらわれることなく、素直な心でいたいですね。ロジックにとらわれすぎないで、フラットな心でコーヒーを楽しみたいですね。時代によっても、コーヒーは形を変えていくものだと思いますし。

    撮影:yoko

  • KOHII PEOPLE #15 Made Solid ディレクター:Mia

    KOHII PEOPLE #15 Made Solid ディレクター:Mia

    ロサンゼルス初のレザーブランド「Made Solid(メイドソリッド)」のディレクターとして活躍するMiaさん。コーヒーショップ/コンセプトスペース「Toner」 と組み、東京・学芸大学にMade Solid初となる日本の店舗をオープンさせ、さらにコーヒーへの熱が高まっている。

    そんなMiaさんが、毎日を愛おしむことができているきっかけが、コーヒー。彼女の生き方の一端、そして、側にある“コーヒー”の存在について聞いた。

    「コーヒーにまつわるすべてのシーンが愛おしい」

    ーーどのようにコーヒーを楽しまれていますか。

    家で自分で淹れて飲みます。暑い日も寒い日も、通年ホットでしかのみません。気分を変えたいときはオーツミルクを入れることもありますが、基本ブラックです。家で仕事の前に朝パートナーと一緒に飲むコーヒーの時間が、一日の中で大好きな時間。フレンチプレスで一時期淹れていましたが、ここ10年はケメックスで淹れています。

    浅煎りから中煎りの豆を、いろいろなところのものを試して飲んでいます。朝少し時間に余裕がある日は、その日の気分でレコードを選び、音楽を聴きながら二人で何気ない会話をしながらコーヒーを飲む。その時間は、至福のひとときです。

    私にとってコーヒーとは、コミュニケーションの一部。

    「好奇心の赴くままに、キラキラしていたい」

    ーーMiaさんのマイルールは?

    朝はだいたい同じ時間に起きてパートナーと毎日朝食を一緒にとったあとにコーヒーを飲みながら、いろいろな話しをして一日をはじめます。その後は運動をしてそれから夜まで仕事をしています。生活のリズムを整えることが精神的な安定にも繋がると思うので、自分自身のルーティンを大切にしています。

    ーー素敵な⼤⼈とは?

    素敵な大人かあ。たくさんありますが、やはり自分自身を大切にしている人は素敵だなあと感じますね。あとは想像力が豊かな人。

    自分自身を大切にしている人、想像力が豊かな人は、周りの人にも素敵な心配りができていることが多いように思います。生きていく上で人と人との繋がりはやはり大事だと思うので、自分自身も周りも大切にできる人は、素敵な大人だと感じます。

    ーー1 ⽇にあともう5分あったら?

    ちょっと理屈っぽいかもですが、その5分欲しくないかなあ。24時間でも24時間5分になっても結果一緒な気がするので(笑)

    Mia

    2014年にPeter Maxwellとともにレザーブランド「Made Solid(メイドソリッド)」を立ち上げる。同ブランドのクリエイティブディレクター。ロサンゼルスに店舗兼工房を構え今年の秋にCalifornia Palm Springsに2店舗目をオープン。不動前にあるコーヒーショップ/コンセプトスペースToner と組み学芸大にMade Solid初となる日本の店舗をオープンさせる。

  • KOHII PEOPLE #14 Strangerオーナー:岡村忠征

    KOHII PEOPLE #14 Strangerオーナー:岡村忠征

    2022年9月に映画館「Stranger」を墨田区菊川にオープン。「映画を知る」「映画を観る」「映画を論じる」「映画を語り合う」「映画で繋がる」という5つの体験を、一連の映画鑑賞体験として提供する新しいスタイルを目指し、語り合う場としてのカフェにもこだわり、東京の東エリアから新しい映画文化を発信している。

    そんな岡村忠征さんの生き方の一端、そして、側にある“コーヒー”の存在について聞いた。

    「コーヒーはいつも何か相手を求めている飲み物」

    ーーどのようにコーヒーを楽しまれていますか。

    切り換えのためのコーヒーと、一緒に時を過ごすためのコーヒーがある。

    朝起きて目を覚ますために飲むコーヒーや食後に仕事に戻る前に飲むコーヒーは、切り換えのコーヒー。書き物をしたり映画を観たりする時に飲むのは、一緒に時を過ごすためのコーヒー。そう考えると、コーヒーというのは相棒としてかなり気が利く存在だ。わりと頑固で個性が強い存在なのだが、実際はこちらの都合に寄り添ってくれる。

    どこかのお店で飲むコーヒーには、淹れる人のメッセージを感じる。コーヒーの味は、意志がないと決まらない。小さくて押しつけがましくなくても、コーヒーには必ずなにがしか意志がこもっていると感じる。見知らぬ人との、寡黙な意志のやりとり。コーヒーショップや喫茶店でコーヒーを飲む楽しみだと思う。

    できればテイクアウトの容器ではなく、カップで飲みたい。ゆっくりそれなりに時間をかけて。でも冷めきらない程度に。豆はエチオピアが好き。最近では、酸味があるアメリカーノがお気に入り。ガトーショコラとコーヒーの組合せが好き。ガトーショコラが美味しいお店の場合、苦みのあるブレンドなどをオーダーすることが多いです。

    動物はコーヒーのような飲み物を発明できないし、しないと思う。わざわざ実を摘んで豆を焙煎して、エイジングして、お湯を注いで。しかも、ほんの少しの差異でまったく味が変わる。ワイルドな色や匂いなのに、とても繊細。

    つくづく人間というのは、不思議だと思う。人間のセンシング能力(感覚を感知する能力)が高すぎるために、宇宙的視野でみればほとんど同じものなのに、そこに千差万別の違いを見いだしてしまう。コーヒーのことを考える度に、人間というのはややこしいものだと思うと同時に、人間の尽きせぬ創意工夫の欲望に頼もしさを感じる。

    そして、コーヒーというのはいつも何か相手を求めている飲み物だと思う。本、散歩、お菓子、ケーキ、チョコレート。何かと組み合わさりたいという力を感じる。

    「寝る前は、明日起こるかもしれない楽しいことを思う」

    ーー岡村さんのマイルールは?

    眠るときに必ず、明日の日に起こる楽しいことを一つ想像する。どんなにしんどいときやキツイときでも、前向きな気持ちで眠りにつき目覚められるように。そのことで、漠然とその日を迎えるのではなく、その日に何か一つでも掴み取ろうとする気持ちが生まれる。日々にあまりに貪欲だとそれはそれで疲れる。かといって、毎日をただ受け身で過ごすとすり減ってしまう。眠る前にあえて意識して次の日の楽しいことを想像すると、意外にも、自分が後ろ向きだったことに気付くことが多い。夜は人間を少し消極的にするのかもしれない。そんな夜へのささやかな抵抗として、眠る前の明日のための自己暗示がある。

    ーー素敵な⼤⼈とは?

    「素敵な大人」の印象は、自分の年齢によってさまざまに変わる。以前は、「素敵な大人」と言えば、思慮深くて落ち着いた知的な人や、価値観が確立していてはっきりと意思決定できる強い人などをイメージしていたが、45歳を過ぎてから少し変化した。どんな風に変わったかというと「素敵な大人」というのは、とにかく「優しい人」のことだと思うようになった。色々な経験を乗り越えて、地に足をつけて毎日を送っている人は、だいたいみんな優しい。困難に直面している人を、諭すでもなく慈愛で包み込むような人。そういう人を「素敵な大人」と呼びたい。

    ーー1 ⽇にあともう5分あったら?

    5分は短いようで長いし、長いようで短い。何かをしよう、と思うと多分あっという間に過ぎてしまい、むしろせわしなくなりそうなので、あえて何もしない時間にしたい。自宅のマンションが立地上恵まれていて、とても綺麗に夕陽が見える。玄関のドアを開ける前に立ち止まって夕陽を眺めることがしばしばあるが、せいぜい2、3分のような気がする。ただ突っ立って夕陽を眺めるのに7、8分は長い。でも、もし毎日もう5分プレゼントされるなら、そんなことに使いたい。

    岡村忠征

    1976年生まれ。広島県広島市出身。ブランディングデザインのアートアンドサイエンス株式会社代表。デザインコンサルティング業務のかたわら、2022年9月に映画館Strangerを墨田区菊川にオープンさせる。「映画を知る」「映画を観る」「映画を論じる」「映画を語り合う」「映画で繋がる」という5つの体験を一連の映画鑑賞体験として提供する新しいスタイルをめざして開館。語り合う場としてのカフェにもこだわり、東京の東エリアから新しい映画文化を発信している。

  • 「MADE IN SHIBUYA」渋谷の街で焙煎された、稀有なコーヒーが味わえる。【Roasted COFFEE LABORATORY】

    「MADE  IN SHIBUYA」渋谷の街で焙煎された、稀有なコーヒーが味わえる。【Roasted COFFEE LABORATORY】

    音楽やアート、ストリートカルチャーの発信地、渋谷。特にアパレルショップやカフェの集まる神南の地に根付いたコーヒーショップとして、常に新しい魅力を提案し続けている『Roasted COFFEE LABORATORY(ローステッド コーヒー ラボラトリー)』。

    このお店の特徴は、なんといっても立派な焙煎機があること。焙煎したてのいわば「MADE IN SHIBUYA」のフレッシュなコーヒーが味わえる。今回お話を伺ったのは、ストアマネージャーの伊藤貴雅さん。

    淹れる所作を大事に。音を立てないように

    コーヒーの業界に入って、ちょうど10年くらいが経ちました。それまでは、全く別畑にいました。大学卒業後は音楽業界でライブ活動と楽曲作成をし、その後縁あって小さいベンチャー企業に転職。コーヒーと出会ったのは、その頃。通勤途中の駅にあるスターバックスへ、週2〜3で通うようになったことがきっかけでした。出社時に立ち寄ったり、仕事終わりにまた寄って残務をしたり。当時の自分にとってスターバックスが生活に切っても切り離せない存在に。

    とはいえ、じつは当時はコーヒーは一切好きではなくて。それこそ、ブラックのコーヒーなんて飲めなかった。通っていたスターバックスで頼むのも、ホワイトモカのような甘いドリンクばかり。

    そうして店に通ううちに、バリスタのかたと仲良くなりまして。ある日、名前を聞かれたんです。名前を聞くってなんだと思いつつ答えたら、次行ったときにお店の方全員が私の名前を知っていてくれてまして。「伊藤さん、今日もお疲れ様です」と。

    ちょっと感動しました。すごいな、こんな接客ができるんだなと。

    コーヒー自体に興味はなかったとはいえ、そういったコミュニケーションの中でコーヒーの試飲を勧められて飲んだりしているうちに、少しずつブラックコーヒーを飲めるようになってきました。しかも飲んでみると、あれ、美味しいかもしれないぞと。

    そんな折、スターバックスの求人に出会いました。バリスタという仕事に強烈な印象があったので、その世界に飛び込んでいきたいなと直感的に感じて入社。その時点では、コーヒーというより、バリスタという職業に興味がありましたね。そこで、ケニアとスマトラの飲み比べをしたのですが、同じコーヒーであるのに全く違う味。何だこれは、とびっくりしました。いままでは、コーヒーとはみんなほぼ同じ味だと思っていたので……。

    好きなコーヒーは、エチオピア産でナチュラル加工のもの。艶やかなベリー感とフローラルな香りが鼻から突き抜ける感じが強烈で最高です。ドリップにしても華やかですし、エスプレッソにしても美味しい。ラテにすると、ミルクの甘さとの相性ばっちり。私の中ではそれを超えるコーヒーはないんじゃないかってぐらい、好きですね。

    コーヒーを淹れるときのこだわりは、淹れる一杯一杯に、その一瞬一瞬に魂を込めること。今の自分ができる最高のレベルで丁寧に入れて、常に完璧に追求しています。本当に細かく0.1グラム単位で軽量したり、コーヒー豆が劣化しないように空気に触れる時間をできるだけ短くしたり。

    そして、淹れるときは手際よく。

    バリスタは「見られる」仕事ですので、手際よくありながらも美しい所作を心がけています。バタバタしていたら、せわしないじゃないですか。流れるように素早く。姿勢も大事ですし、一番気にかけているのは、音を立てないように淹れることですね。

    そして、コーヒーのプロではありつつも、お客様に対してなんかどこか親しみやすさがあった方がいいなと思っていて。相手が求めるレベルで砕けた会話ができるとか、そういうバリスタ像はかっこいいなと思いますね。

    コーヒーを淹れるときの所作が染み付いてしまってるので、家でコーヒーを淹れるときもできるだけ早く動いてしまったりします(笑)。それでも自分が飲む一杯だったり、誰かに飲んでもらう一杯だったりするわけなので、できるだけ美味しいコーヒーを淹れたい。お店で淹れるときも家で淹れるときも、コーヒーを淹れるときのマインドは変わらないです。

    コーヒーを飲む瞬間は、できるだけ無になってコーヒーのおいしさに注力したいですね。ただやっぱり、ある程度突き詰めるために飲んでいる部分も絶対ゼロじゃなくて。だから、100%当に肩の力抜いて飲むことは、多分もうできないのかも。というか、できなくてもいいかな。飲むときはやっぱり「産地はどこだろう」とか、いろんなことが頭を巡っちゃうんですよね。

    これからも、そうして「舌を鍛えて」いきたいです。鍛えた舌を持ちつつ、それを何か適切な言葉でアウトプットできるようにしたいです。飲んでみたものを頭の中で反芻し、さらにそれを言語化していきたいです。

    お客様には、「コーヒーの味わいの違い」の楽しさをぜひ感じていただきたいです。私自身がコーヒーに大きく興味をもつきっかけになったのも、コーヒーの味わいの違いだったので。飲むときは大概一杯だけだと思うのですが、その日飲んだコーヒーと、例えば次の日飲んだコーヒーの違いはどんな部分だろう、とちょっと気にしてみたり。そうすると、よりコーヒーを楽しめるようになると思います。

    商品による違い、お店による違い、抽出法による違い、焙煎による違い、産地による違い、生豆の加工法による違い……いろいろ感じてみると、よりコーヒーが楽しくなります。

    そうしてコーヒーに注目しているうちに、もうすっかりコーヒーの魅力に取り憑かれてしまうはず。

    と同時に、何も考えずぼーっと過ごせる時のおともとしても、うってつけなのがコーヒー。オンにもオフにも傍にある、稀有な存在だと思っています。

    旅行が趣味でもあるので、コーヒーの聖地でもあるオーストラリアのメルボルンには、いつか行ってみたいですね。

    撮影:yoko


  • KOHII PEOPLE #13 クリエイター:萩原幸也

    KOHII PEOPLE #13 クリエイター:萩原幸也

    企業でクリエイティブディレクターとして働く萩原幸也さん。これまでに、数多くのサービスのブランディングや宣伝を担当してきた。本業の他にも、武蔵野美術大学の客員研究員を務め、社会人に対するアート、デザイン教育のプログラム作りなど、数々のプロジェクトに関わっている。

    そうした仕事に加え、SNSの発信や取材対応、講演会に登壇するなど個人での活動も多いうえに、プライベートでは2児の父でもある。仕事もプライベートも充実し、ときに慌ただしい日々を送る萩原さんのブレイクタイムに欠かせないのがコーヒーだ。

    「コーヒータイムは唯一、ひと息つける時間」

    ――萩原さんにとってコーヒーとは?

    ひと息つきたいときの相棒のような存在。コーヒーを飲む時間はタバコを吸わない自分にとっては唯一、仕事や日常に区切りをつける時間なのだと思います。長年使い込んだTHERMOSのマイカップにコーヒーを淹れ、じっくり味わう――。そんな穏やかな時間がいいですね。

    普段から自然や植物が好きなので、リフレッシュを兼ねて、いつものマグカップを片手に散歩に出ることもあります。緑を眺めていると不思議と落ち着き、フラットな気持ちに。都会の喧騒から逃れてコーヒーを飲みながらゆっくり過ごす時間は、僕の活力になっています。

    ――1 日を過ごすうえでのマイルールはありますか?

    夜、寝る前に昨日との差分を考えるようにしています。もちろん、何も変わらない日はあるんです。それでも、1mmでも何かしらの変化や積み重ねが見つけられた日は、充実感でよく眠れる気がしますね。

    「もしもの5分よりも日々の毎分毎秒が大切」


    ――1 日にプラスしてもう5分あったら何をしますか?

    そうですね……。正直なところ、おそらく5分だと何も変わらないので、何もしないかな……。とはいえ、12日で1時間――。そう考えると、何かできそうな気がしてきますね。笑

    でも、いつもの毎日を振り返ってみると、そういう「何かできそう」な時間が1日の中にいくらでもあることに気が付きますね。なので、もしもの5分のことを考えるよりも、日々の毎分毎秒を大切にしたいと思います。

    ――萩原さんが考える「素敵な大人」とは?

    たいていの「素敵な〜」「大人の〜」という言葉は、歳を重ねて身につけた落ち着きや、余裕のある様を指しているように思います。そういう生き方も素晴らしいと思いますが、僕はずっとそうはなりたくないと思ってきました。笑

    何だか、丸くなってしまうのが嫌というか……。なので、いまだにパンクやメタルを好んで生きているというような、ちょっと尖った姿勢のある大人を尊敬しています。落ち着きすぎず、やんちゃで、いつまでも好奇心を失わないような人。自分もそうありたいですね。

    萩原 幸也

    1982年山梨生まれ。2006年 武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業後、株式会社リクルートに入社。リクルートグループのコーポレート、サービスのブランディング、マーケティングを担当。ビジネスをはじめとする講演会への登壇も行っている。

  • 本を片手に、ちょっとゆっくりコーヒー時間を。岐阜県・多治見【喫茶わに】

    本を片手に、ちょっとゆっくりコーヒー時間を。岐阜県・多治見【喫茶わに】

    岐阜県・多治見駅から5分ほど歩く場所にある、「喫茶わに」。もともと時計店だったビルをリノベーションしたレトロな外観が、目を引く。喫茶わにがあるのは、このヒラクビルの1階。隣には、ひらく本屋という本屋がある。ということは、購入したてほやほやの本の手触りを感じながら、新しい本の香りをほのかに感じながら、コーヒーが楽しめるというわけだ。今回はそんな、ほっこりとした休憩タイムが過ごせる「喫茶わに」の店長、田平沙織さんに話を聞いた。

    地元の人が集い、お話できる場所に

    このお店に立つ前は、ドッグフードを扱う会社で商品開発をしていました。獣医学部を卒業し獣医師になりたかったのですが、動物の病気には獣医師では治せないものもたくさんあります。そこで動物が日常で摂取する栄養についてもっと勉強したいという思いが強くなり、獣医学から獣栄養学へとシフトチェンジ。……というわけで、以前は飲食業とは全く畑が違うところにいましたね。

    ただ、将来お店を開きたいという漠然とした夢もあって。当時ドッグカフェが流行っていたりしたので、いいなぁと思っていました。小学校の頃からキッチンに立って料理を作っていたし、中学校になると、タッパーに作ったチョコレートケーキを詰めて友達に配り歩くみたいなことをする人間だったので(笑)。料理することが好きだったんです。

    いろんな人生の転機があり前の会社を辞め、地元の多治見に帰ってきました。そこで飲食店の求人を探していたところに、「カフェ温土」の求人を見つけ、ダメもとで飛び込んでみました。それが、飲食業に入る最初のきっかけ。「カフェ温土」の店長をしながら、このヒラクビルを作るプロジェクトに携わっていました。そんなある日、ヒラクビルの中で店を開かないかという話をいただいて。そうして、「喫茶わに」を作ることになったのです。

    喫茶わにの「わに」には、いろいろな思いが込められています。一つは、店にある円いテーブルに人が座ると「輪になる」ようになっていて。「輪に」と「わに」をかけています。また、ワニみたいに口を大きく開けて、楽しくお話をしてほしいという思い。お店に来て話をしたり交流をしたりできる場所であってほしいという思い。また、このビルは「ヒラクビル」という名前なのですが、その前は「ワタナベビル」という名前で100年ほどの歴史のある場所でした。そのワタナベビルの歴史を残すために、「ワタナベビルにできた」というダジャレで「わ」と「に」を残して、わに。

    ……とかいいつつ、最初は名前が全く決まらなくて。どうしよう、と思い悩んでいたときにふっと目線の先にあった本棚で『じょうずなワニのつかまえ方』という本が目に入って。面白い本で愛読書だったんですけどそれを見つけたときに、「『わに』はどうですかね」とまわりに提案したんです。最初はみんな「??」となっていたのですが、「確かに『わに』ってないねぇ、いいかも」となって。そんなふうに店名の「喫茶わに」には、いろいろな由来があるんです。小さな子も呼びやすい名前なのも、素敵かなと思います。

    お客さまとのコミュニケーションで大切にしているのは、「誰に届けるか」をちゃんと考えること。届ける相手が誰かというのは、どの仕事をするにも一番念頭に置いています。「喫茶わに」の場合は、常連さんが「あれが食べたい」って言っていたなぁと思ったら、それを作っておこうかな、とか。「誰が受け取ってくれるか」というのを、いつでも忘れないようにしています。

    コーヒーは小さな頃から飲んでいて好きだったのですが、「喫茶わに」を初めてからは、コーヒーをお店の主軸に置いていることもあり、さらにコーヒーの味わい方が変わりましたね。今お店では扱っているコーヒーは、地元・多治見で自家焙煎されている「Jikanryoko」さんというコーヒー屋さんから仕入れています。お店オリジナルの「わにブレンド」もお願いして作ってもらっていて、とても人気なんですよ。

    私にとってのコーヒーとは、「スイッチ」です。一日に、結構な量を飲むんですよ。朝起きて飲んで、店に来て仕事を始めつつ飲んで、ラテアートの練習がてら飲んで。ディナータイムになる前に飲んで、家帰って飲んで……となると、1日5杯ぐらいは必ず飲んでいますね。それが全部、何かの切り替えになってるんでしょうね。「コーヒーを飲んで頑張らなきゃ」と飲むオンスイッチでもあるし、「コーヒーを飲んでゆったりしよう」と飲むオフスイッチでもあります。

    コーヒーの味わい方っていろいろあると思いますけど、「こっちの方が好き」とか「なんか今日のコーヒーおいしい気がする」って思えたら、じゅうぶん素敵だと思います。私がおいしいと思うものや、誰かがおいしいと言っていたものを、また誰かに「このコーヒーおいしいよ」と、すすめたくなります。「喫茶わに」のコーヒーも、ぜひ飲みに来てもらいたいですね。





  • KOHII PEOPLE #12 インスタグラマー:@iku_coffee_

    KOHII PEOPLE #12 インスタグラマー:@iku_coffee_

    I can’t imagine a day without coffee.として、日々のコーヒーの風景をインスタグラムに綴る、長野県在住のインスタグラマー@iku_coffee_さん。元カフェ店員で、コーヒーと山と写真が好き。

    そんな彼女の生き方の一端、そして、側にある“コーヒー”の存在について聞いた。

    「コーヒーにまつわるすべてのシーンが愛おしい」

    ーーどのようにコーヒーを楽しまれていますか。

    両親が小さな喫茶店を経営しているので、コーヒーは子どもの頃から身近にありました。嫌いではないけど苦い飲み物だなあ、と思っていたので、紅茶ばかり飲んでいました。コーヒーに目覚めたのは、まだ2~3年のことです。

    こんなにも好きになったのはとても意外なのですが、今は空気のような存在で、なくてはならないものです。コーヒーの器具、抽出の過程、コーヒーの香りが漂う空間……。私にとっては全てのシーンが愛おしいです。

    コーヒーについての興味は深まるばかりですが、専門的な知識がそれほどなくても、とにかくおいしい、楽しいと思えたら最高に素敵なコーヒーライフといえるのではないでしょうか。

    毎日、まず自分がどんなコーヒーを飲みたいのかを探ります。浅煎り~深煎りまでどれでも好きですが、体調や気分、お菓子があるならペアリングを重視します。

    抽出に関してはいろいろと方法がありますが、私は珈琲豆を買ったお店のおすすめの淹れ方でまずやってみます。あとは自分に合うように微調整をしたりして、自分にとっての正解を探していく過程もおもしろいですね。コーヒーの世界に浸かれば浸かるほど、奥が深いなあと、日々感じています。

    「いくつになっても、好奇心の赴くままに」

    ーー@iku_coffee_さんのマイルールは?

    マイルールとして決めているわけではありませんが、気が付くと続いているのは、白湯を飲むことです。アーユルヴェーダに詳しい知人に教えてもらったやり方で、10~15分鉄瓶で沸かせて作ります。初めのうちは健康のためと思っていましたが、おいしいと思うようになってからは毎日欠かさず飲んでいます。以前よりも心なしか体が冷えにくく、循環がよくなったと思います。

    ほか心がけている事は、物ぐさな性格ですが、後回しにしてしまいがちなことをできるだけ早く終えられるようにして、悶々とする時間を減らすようにしています。体も頭の中もシンプルに整えると、ありふれた日常の中に心地よいと感じる時間が増えるような気がします。

    ーー素敵な⼤⼈とは?

    子どものように好奇心旺盛で自分の好きなものをよく知っている方は素敵だな、と思います。周りの声は関係なく、自分の内側から純粋に好きだと感じるものに敏感でフットワークの軽い方は目がキラキラと輝いていて、いい雰囲気が伝わってきます。年齢をいくつ重ねても失敗を失敗とせず、好奇心の赴くままに没頭して楽しんでいる方は魅力的で、とても憧れます。

    ーー1 ⽇にあともう5分あったら?

    何もしない。をします(笑)。一日のどこかでボーっとしている自分がいるのですが、追加できるなら、増やしたい時間です。あれもこれもしなきゃ(したい)で欲張って時間を埋めたくなってしまいますが、あえて何もしない余白の時間もいいと思います。何もしない、というか自由時間ですね。ボーっとするでも、その時の気分で本を開いたりキャンドルを灯したり、やりたくなったらやる。

    物理的な時間から離れて、自分の感覚的な時間を持つというか……。ひと呼吸して立ち止まる時間を作ることで、閃いたり自分自身や物事を客観視する余裕が生まれるので、大事な時間ではないかと思います。

    @iku_coffee_

    I can’t imagine a day without coffee.として、日々のコーヒーの風景をインスタグラムに綴る。京都→大阪→長野。長野県在住。元カフェ店員で、コーヒーと山と写真が好き。

  • コーヒーの街・清澄白河にて。材木倉庫の息吹を感じながら開放的な空間で飲むコーヒー【オールプレスエスプレッソ】

    オールプレスエスプレッソは、1989年に創始者であるマイケル・オールプレスがニュージーランドで始めたロースター。それがコーヒーの街・清澄白河にデビューしたのは、2014年のこと。マイケルが東京の街を自転車を走らせていたときに見つけた古い材木倉庫をリノベーションし、地元の人に、そしてコーヒーラバーに愛される清澄白河のロースタリーカフェとして誕生した。今回は、焙煎・品質管理を担当する石田祐太さんに話を聞いた。

    人と人をつなげる、それこそがコーヒーの良さ

    コーヒーはずっと、好きです。小さい頃に飲んだコーヒー牛乳の頃から、好き。その頃はブラックコーヒーは飲めなかったんですけど、おばあちゃんが休みの日の昼ごはんで出来合いのリキッドコーヒーを休みの日のに出してくれるのを飲んで、ちょっと味を覚えて。中学生の頃から飲んでいましたね。就職は都内の一般企業でコーヒーとは関係のない仕事をしていたのですが、そんな中でもコーヒーとかカフェっていうのは趣味でもあったし、自分の落ち着くところというか、純粋に好きだったんですね。そんな頃、ちょうどコーヒーのサードウェーブが来て。

    ある日、エチオピアのイルガチェフェを飲んで「僕が知っているコーヒーとは全然違う!」と衝撃を受けました。当時はまだ喫茶店スタイルやコーヒーのチェーン店が多い中で、サードウェーブスタイルのコーヒー屋さんだとバリスタとお客さんの距離が近くて、そこで交流が生まれる。コーヒーが人と人を繋いでるそんな様子も、すごく魅力的に感じましたね。

    コーヒーが好きだという思いもありつつ、いつか海外に繋がる仕事をしたいなという思いがありました。これは、コーヒーを始めるしかない!と、コーヒーの仕事に就きました。いまから10年ほど前ですね。いまはもうないですが、神南の「FILBERT STEPS」というお店です。

    次は、「Coffee Wrights」という三軒茶屋にあるお店に。その後カナダのバンクーバーへワーホリで1年間行きました。そこバリスタとして働き、帰ってきてからは生豆の卸の業者の営業をしていました。コーヒーに関わるいろいろな職に就きましたが、やっぱり直接コーヒーに携わりたい自分がいて。提供したり、焙煎したりしたいなぁ、と。特に焙煎に興味があり、ここオールプレスエスプレッソで働くことにしました。

    焙煎士は、技術職に近くて人と話す機会は全然バリスタよりも減ります。もう、豆と話すみたいな、そういう感じ。ですがここのお店はガラス張りになっていて、焙煎をしながらでもお客さんの顔がすごく見えるんですよ。そのバランスが、自分にとってすごくいいですね。自分が焼いた豆をお客様が飲んでいる姿を見られるっていうのは、うん、大きいです。僕がコーヒーに携わっているベースとしては、コーヒーを通じて人が繋がることに関われるのがすごくうれしいので。

    仕事の上でこだわっていることは「フレンドリーであり、プロフェッショナルであること」。カジュアルでありつつ、職人気質は忘れずにいたいです。自分の中ではあくまでもプロフェッショナルではあるけれども、お客さんさんと話すときはカジュアルに。お客さんからは親しみやすいと思われていても、焙煎や抽出のところではシビアにコーヒーと向き合っている。そんな二面性を大事にしています。焙煎しているとお客さんと実際に触れ合うことがないですが、このお店はガラス張りでもあるので「見られていること」は意識して、コーヒーを扱う所作を大切にするようにしています。

    このお店は、開放感がいいんですよ。焙煎しているところも見られるなんて、いい環境だと思います。木材倉庫だった過去の空気感も残しつつ建てられていて、どこか居心地がいいんですよね。

    焙煎方法にも、いろいろあります。「オールプレスエスプレッソ」ではローリングといって熱風式の焙煎機を使っています。他には直火、半熱風方式などがありますが、熱風式だと1日で何回も焙煎ができ、味も安定していて、味わいもクリアに仕上がります。豆の卸をしているので、効率よく安定した味に仕上がることを、大切にしています。

    焙煎方法によって、味わいも変わってきます。例えばローリングはまろやかですっきりとしたクリアな味になりやすく、半熱風は尖りのある味になりやすい。バリスタ時代は、焙煎方法の違いが味に与える影響ってあまりよくわかっていなかったですが、味わいが変わってくるんですよね。同じコーヒーに携わっていても、視点を変えることで見えることがある。それを、大切にしています。今後は、豆の精製法のほうも掘っていきたいですね。スペシャルティコーヒーって精製法がたくさんあるんです。発酵や、お酒に漬けたりというのもあります。それを勉強していきたいです。

    コーヒーに携わって10年経った今でも、一番おいしかったコーヒーを思い出すと、先ほど申し上げた「おばあちゃんのコーヒー」なんです。

    ただ出来合いのリキッドコーヒーに、お湯を入れるだけのものなんですけど。もちろん薄いです(笑)。でも、なんかおいしかったんですよね。自分的に印象に残ってるのって、今でもそのコーヒー。究極なところをいうと、むしろそれが理想というか。

    もちろん「このコーヒーはエチオピアのなんとかで、こういう品種で、こういう精製法で、すごいおいしい」という世界も大切なんですけど。それを抜きにしても、「なんかこのコーヒーおいしいね」とか、そのコーヒーを飲むことで会話が生まれたり。例えばパートナーにコーヒーを淹れてあげるシーンとか。そういうこと全部が、僕のコーヒーの理想の楽しみ方ですね。

    コーヒーは僕にとって、人と人を繋ぐ最高のツール。自分が焼いた豆や提供したコーヒーで、人と人が繋がってくれるのが理想ですね。