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  • KOHII PEOPLE #11 libyscoffeeオーナー:江田百輝

    KOHII PEOPLE #11 libyscoffeeオーナー:江田百輝

    調理の専門学校であるレコールバンタン高等部のバリスタ科に通う現役高校生である、江田さん。高校2年生の9月に人生を変えてくれるようなおいしいコーヒーと出合い、コーヒーにまつわる活動を開始。全国のカフェを巡りながらコーヒーの知識を深め、自身で焙煎を始めるように。インターネットで豆の販売や期間限定のポップアップストア「libyscoffee」を開催している。

    そんな江田百輝さんの生き方の一端、そして、側にある“コーヒー”の存在について聞いた。

    「おいしいコーヒーには、二種類ある」

    ーーどのようにコーヒーを楽しまれていますか。

    飲む、淹れる、焼く。色々な方法で、コーヒーを楽しんでいます。僕自身、カフェに対する耐性が全然なくて、2杯くらい飲むと少し不調を感じてしまうんです。それでもコーヒーが大好きなので、ついたくさん飲んでしまいます。いろいろなカフェを巡って買ってきた豆や自分で焙煎した豆を、家で何度も繰り返し淹れて。試行錯誤しながらおいしいと思える淹れ方を追求し、やっと「これがおいしい」と思うものを見つけられるようになりました。それでもまだまだ。だから、とにかくたくさんコーヒーを淹れるようにしています。


    買った豆を最初にカッピングし、どうしたらその豆の個性をさらに引き出せるかを考えながら淹れるのが楽しいんです。焼くことに関しては、まだまだです。焙煎ってすごく難しくて、なかなか上手にできないので、本を読んで勉強中です。

    豆にもこだわっています。ついこの前まで、コーヒーを「おいしい」と思ったことがなかったのですが、先輩にとあるお店に連れて行ってもらいそこで飲んだコーヒーを純粋に「おいしい」と思えて。そのときに、コーヒーのおいしさに気づきました。

    おいしいコーヒーには、二種類あると思っています。「毎日飲める飲みやすいおいしさのあるコーヒー」と「毎日は飲めないけど尖ったおいしさのあるコーヒー」。僕が衝撃を受けたお店のコーヒーは後者で、その感動を知らない人に伝えたいと思っています。

    僕にとってのコーヒーとは……。うーん、悩みます。すごく考えて言語化しようとすると、どうしても薄っぺらくなってしまうような気がして。僕が目指すコーヒーは、日常的に飲むものというよりは、毎日は飲めないかもしれないけれど、ちょっとした贅沢な一杯。個性がきらきらと尖っていてるコーヒーを作っていけたら、と思っています。そのために、精一杯勉強しています。

    僕のコーヒーを喜んでもらえたこと、コーヒーを通して出会った人、全てに感謝しながら。
    本当にありがたいことです。

    「思い立ったら、行動する」

    ーー江田さんのマイルールは?

    そうですね、思い立ったら即行動することです。

    何かしたいな、と思ったら、それに向けてまずは行動してみると決めています。まだいろいろと見えないことがあっても、とりあえず動く。僕自身、考えをまとめるのに時間がかかってしまうんです。そうしているうちに面倒くさくなって行動しないということが、これまで何回かありました。だからこそ、即行動すると決めている。いままで幸運なことに、即行動して悪いように進んだことが一回もないんです。とにかく動いていたら、なんとかなる気がする。

    ーー素敵な⼤⼈とは?

    具体的な人とかは、特にいないんですよね。

    でもこの前知り合いに言われたのが「江田くん、いい感じに尖りまくってるね、今はウニみたいにトゲトゲでも、それじゃいけないって生きていく上でどんどん分かってきて、どんどん丸くなってって、そのときにいい大人になるんだろうね」と、言われたんですよ。僕自身は尖っているという自覚はないですが(僕の淹れるコーヒーは尖りまくっていたいですが)。でも、そういう大人ってかっこいいかも、と思いました。ウニみたいにトゲトゲでいて、優しい大人になれたら。そう、思っています。

    ーー1 ⽇にあともう5分あったら?

    寝ます。睡眠時間を増やします。

    昔は生活リズムがバラバラで、睡眠時間も不安定な時期がありました。そのとき、体調もとても不調でした。それをよくするのに生活リズムを整えるのは大変でしたが、いまではとても体調がよくなりました。それからというもの、睡眠には人一倍気を使ってます。睡眠は、自分の人生の中での最大の幸福だと思って生きているんです。辛いことや嫌なことがあった日も、その日の最後は幸せに過ごせればな、って。だから、その5分は睡眠に充てたいです。

    江田百輝

    東京生まれ東京育ち、現役高校二年生の17歳。レコールバンタン高等部・バリスタ科に通う。全国のカフェ巡りをしながら独学でコーヒーを学び、ポップアップカフェ「libyscoffee」オーナーとして活動。インターネットで豆の販売も行う。現在も焙煎やドリップの練習をしながら、次回のポップアップを計画中。

  • 「キャンプのときは、常に一緒」インスタグラマー:suzuken【私のグッドロケーション for COFFEE】#2

    「キャンプのときは、常に一緒」インスタグラマー:suzuken【私のグッドロケーション for COFFEE】#2

    豆にこだわる人がいれば、焙煎にこだわる人もいる。そして中には、「飲む場所」にこだわる人がいる。本連載では、お店や自宅とは違う、自分だけの⻘空カフェについて「外で飲む派」のみなさんにインタビュー。コーヒーを飲みたいのは、あんな場所やこんな場所、まさかまさかの場所まで。

    今回は、インスタグラマー・suzukenさんにとっての、コーヒーを楽しむ「グッドロケーション」について聞いた。

    あなたは、どこでコーヒーを飲んでみたいですか。想像しながらお読みください、爽やかなコーヒーでも飲みながら。

    「静かな早朝の空気の中コーヒーを飲むと、自然と一体化するようです」

    ーー理想なコーヒーシーンは?

    キャンプでのコーヒー。ソロでキャンプするときも、家族やキャンプ仲間と行くときも。清々しい空気の中で飲むコーヒーは、香りがよりダイレクトに感じます。ロケーションも、最高です。いまでは、「僕のコーヒーが飲みたい」と、一緒にキャンプをする仲間も増えてきました。

    テントの設営を終えたあと、夕暮れを見ながら、焚き火を眺めながら。キャンプでは常に、コーヒーを飲んでいます。その中でも一番好きなのは、静かな早朝に淹れて飲むコーヒー。木々が風でなびく音、水の流れる音、鳥のさえずり、肌に伝わる空気を感じながらコーヒーを飲んでいると、何だか自然と一体化しているようで、とても心地いいのです。

    ひとりで飲むときは、浅煎りの豆を選ぶことが多いです。エチオピアやケニア、ルワンダなど華やかなフレーバーのアフリカ系が好み。気温に合わせて、コーヒー豆を選んだりもします。外で飲むと味覚が繊細になり、特に寒い時期は浅煎りのフレーバーを感じづらくなります。なので秋冬のキャンプは、深煎りの豆を多く持っていったり。夏はキャンプ場へ向かう途中で湧水を汲んで、水出しコーヒーを作ります。そのときも仲間に飲み比べしてもらえるように、浅煎りと深煎り、両方の水出しコーヒーを用意していきます。

    「これからどんな人とコーヒーを飲むかな、と考えるのが楽しい」

    ーーそのとき持っていきたいものは?

    カップには、こだわりたい。金属臭を感じないような、セラミックか陶器やガラスのカップを持っていきます。まあキャンプ道具の中でも、コーヒー関連の荷物は多いと思います(笑)。そのほかは、何もいらない。キャンプシーンでコーヒーを飲むときは、景観、焚火、会話があれば十分。素敵な景観の中で飲むと、普段のコーヒーも特別なものに変わります。

    ーーそのときどんなことを考えて飲むんだろう?

    次はどんな場所、どんなキャンプ場で、どんな人たちとコーヒーを飲んでいるのかな~と想像したり。一緒に行く人も変わると、用意するキャンプギアも、コーヒーの種類も変わるので。どうしようかな?って考えるのも、楽しい。

    ーーあなたにとってコーヒーとは

    常に一緒にいるもの。いつでも、コーヒーを持っているので(笑)。コーヒーを通じて知り合う人が増えたり、いつの間にか僕の周りは「コーヒーといえばsuzukenさん」と認識してくれるようになったりして、うれしいですね。これからもコーヒーと人との繋がりを求めて活動をしていこうと思っています。

    suzuken

    4年前に東京でスペシャルティコーヒーに出合い、そこからコーヒーにハマる。3年前に焙煎機を作り、自ら焙煎するように。インスタグラムで「#北海道のキャンプで美味しいコーヒーを」というハッシュタグにて、キャンプやコーヒーの投稿をする。間借りカフェやイベント出店、STORESでのEC販売など、コーヒーにまつわる活動も展開中。

  • KOHII PEOPLE #10 フォトグラファー:山田大輔

    KOHII PEOPLE #10 フォトグラファー:山田大輔

    フォトグラファーとして、日本全国を駆け回る山田大輔さん。ときには景色を、ときにはヒトを、ときにはモノを。日々いろいろなシーンを切り撮っている。一方で、サーフィン、トライアスロンが趣味という、アクティブパーソン。そして、2児の父でもある。

    そんなさまざまな顔を持つ山田大輔さんの生き方の一端、そして、側にある“コーヒー”の存在について聞いた。

    「コーヒー=スイッチですね」(山田さん)

    ーーどのようにコーヒーを楽しまれていますか。

    朝、一日の始めに。撮影が始まる前。事務所で作業するとき。あらためて思い返すと、何かを始めるとき、休憩するとき、終わったとき、といった区切りのタイミングで飲んでいることが多いですね。

    海に入る前とか、トライアスロンの練習に向かう前など、スポーツする前にもコーヒーを一杯。カフェインを摂取すると、集中力が上がるなんていいますしね。

    コーヒーは区切りで飲む習慣のようなものだけど、家でゆっくり淹れるときは、味を追求します。豆を挽いて、メジャーで量や時間を測って、丁寧にドリップして。よく言われることかもしれないけど、そこに流れる時間も好きだったりするんです。

    味としては、深煎りのほうが基本的には好きですね。浅煎りや酸味が強いものは、あまり得意ではなくて。ただ飲むタイミングで、選ぶ味を変えたりもします。何かを始めるときはすっきり飲める中深煎り、ブレイクするときはホッと一息できる深煎り、のように。

    家で楽しむときは、読書したり音楽を聞いたり映画を観たりと、カルチャーに触れながらが多いかな。レタッチ作業などで画面と向き合っていることも多いので、いったんPCから離れてコーヒーを飲みながら、好きな写真集をパラパラとめくったり。

    豆を何種類か買っておいて、そのときの気分で選びます。仕事柄、地方に行くことも多いため、場所場所での出会いも多くて。ビビッときたら、買いますね。そのときは、お店がおすすめするものを試すことが多いです。そのお店の特徴を、一番忠実に感じられると思うから。

    コーヒーとの出会い? うーんそうだな、30代になりたての頃。仕事で、ある男性アイドルの写真集を撮ったことがきっかけです。初めての大きな仕事だったから、よく覚えていますね。彼の映画を題材にした写真集だったのですが、映画のテーマが「生活音」でした。その中でコーヒーを淹れるシーンがあって、コーヒーを淹れる音というものを、初めて意識した。そんなことって今までなくて、それで「コーヒーを自分でも淹れてみようかな」と興味が湧いて。それまでも、コーヒー自体は好きだったんですけどね。自分で豆を挽く、淹れるまではしていなかったから。そうするうちに、仕事でコーヒーに関わることが増えたりもして、いろいろな出会いもあって。コーヒーの世界って知れば知るほど奥深くて、これは勉強になるなと。で、どんどん沼に。笑。

    「寄り道を大切にしている」

    ーー山田大輔さんのマイルールは?

    毎朝起きたら、ストレッチと波チェックは絶対にします。仕事でサーフィンに行けない日でも、波の状態が気になっちゃうんですよね、見なきゃいいのに。笑。ストレッチも、作業してる合間に。それこそ、マイルールのようにやっていますね。作業していると、どうしても体が固まっていっちゃうので。区切りにコーヒーでスイッチいれるのに、似ているのかも。

    考え方とかそういうことなら、「寄り道」を大切にしています。

    結果に対してどれだけ「まっすぐ」「早く」行けるかだけでなく、過程=寄り道も、大切にしたい。僕、もともと美大で油絵を専攻していたのですが、その考え方はそこにはじまっているのかもしれない。絵って、こう描いてこう描いていったら、こうできあがる。っていうのってなくて、途中でいろいろアクシデントがあるのが、当たり前で。絵の具の乾き方も、想像と違ったものになったり。スタートしてからゴールするまでは、プロセスや考え方なんて、どんどん変化・進化するものだと思っています。寄り道があるからこそ、自分のものさしや経験値、知識ができあがってくると思うんです。

    もちろんゴールは設定するのですが、なんていうのかな、絶対決まったゴールに行かなくてもいいのかな、というか。そこにいい感じの余白があると、流れにのって、結果うまくいく気がする。

    考え方においてもそうだし、普通に「寄り道」も好きですよ。普段いくスーパーやコンビニに買い物行くときも、毎回違う道を通ってみたりね。脇道とか路地とか、好きなんです。

    ーーあなたにとって素敵な⼤⼈とは?

    どんな大人になりたいですか?っていう質問だったら、もう十分大人なんでね。笑。僕にとっての素敵な大人は、自分の「ものさし」を持っている人。自分の判断基準、価値基準がある人は、素敵ですね。大人ってある程度の経験値で、ものさしを作れると思うんです。だから、若いときみたく直感だけではなく、経験値からの勘で物事を選びとっていく。勘とは、その人がどんな経験をしているかで、作られるものだと思います。だからそれが、魅力とかその人の価値になる。外見もしかりで、経験が見た目のかっこよさにも出る気がします。

    ーー1 ⽇にあともう5分あったら?

    うーん、何しよう。5分……。それこそ、普段は、5分くらいの合間でストレッチするので、ストレッチかなあ。とくに肩甲骨を動かすと、頭をリセットできる。だから、あともう5分あったら、やっぱり肩甲骨のストレッチをするかな。いずれにせよ、体のメンテナンスに使いたいよね。

    5分多くストレッチをしたことで、24時間のパフォーマンスをあげられるなんて、すごく効率的。結果、5分以上の価値になる。自分は基本、めんどくさがりなんですよ。コンスタントに続けたい習慣も、疲労があるとついやる気をそがれてしまう。だからこそ少しでも意識することで、疲れにくい体にしておきたい。そのための5分。積み重ねておきたいです。

    山田大輔

    フォトグラファー。『ブラタモリ』スチール撮影をはじめとした風景写真、数多くの著名人や企業人、タレントのインタビュー、グルメ、ファッション、旅……と、多ジャンルで活躍。趣味は、サーフィンとトライアスロン。「10代から、80代まで。いろんな人に会える。そういうのも、この仕事のおもしろいところですね」

  • KOHII PEOPLE #9 Witty Vintageディレクター:赤嶺玲子

    KOHII PEOPLE #9 Witty Vintageディレクター:赤嶺玲子

    東京・祐天寺に店を構えるヴィンテージショップ「Witty Vintage」ディレクターとして発信を続ける、赤嶺玲子さん。モードに着られる状態のいいヴィンテージがセレクトされたラインナップは、業界人からも高い支持を得ている。そのうえ、彼女の独自のセンスから生み出されるスタイリングや言葉には、ファンも多数。最近では、プラントベースのオリジナルブランドのバッグの販売なども開始するなど、エシカル観点での意識も高い。

    そんな赤嶺玲子さんの生き方の一端、そして、側にある“コーヒー”の存在について聞いた。

    エシカルにコーヒーを楽しみたい

    ーーどのようにコーヒーを楽しまれていますか。

    コーヒは、日々のちょっとした楽しみなんです。「お家に帰って温かいコーヒーを飲もう」と思うだけで、気分が良くなります。

    最近は、忙しくてインスタントを飲むことも多いです。朝は息子たちのご飯の準備でばたばたなので、その間にオーツミルクを温めて、そこにインスタントの粉を投入。甘めが好きなので甜菜糖も少し入れます。

    友人が遊びに来たときには豆から挽いて入れたりもしますが、詳しいわけじゃぜんぜんなくて(笑)。

    豆を購入する際はピーベリーを買います。希少かつ、豆の成長の過程のドラマティックさが好きなので。

    フィルターはステンレスのものを使用しています。ゴミが出ず買い足す必要もないのが、心地いい。

    選ぶときは、フェアトレードのものをできるだけ選ぶようにしています。わたしがそのコーヒーを買うことで満足のいく対価が生産者に渡っていると思うと、気持ちがいいです。

    自分に厳しくしない

    ーー赤嶺玲子さんのマイルールは?

    子どもを保育園へ送った後近くの公園までウォーキングへ行き、シャワーを浴びてから5~15分瞑想をします。

    もちろん仕事や用事でできない日もありますが、続けてできなくても、行けるときに行くようにしています。週5日以上続けていないと「持続している」とは言えないかもしれませんが、私の中では、たとえ2〜3ヶ月空いたとしても、行ける日に行っていること自体を「習慣」とみなしています。自分に厳しくしないこと、それが私のマイルール。

    ーー素敵な⼤⼈とは?

    自由である人 。

    自分の価値や意義を他人に決めさせず、周りで起きている状況に対して自分にとってプラスに解釈できる人。

    ーー1 ⽇にあともう5分あったら?

    ぼーっとする。この世で一番、生産性のある行為だと思ってます。

    赤嶺玲子
    Witty Vintageディレクター。2017年より、オンラインストア「Witty Vintage(ウィッティ ヴィンテージ)」をスタート。2020年より、東京・祐天寺にて実店舗をオープン。最近では、プラントベースのオリジナルブランドのバッグの販売なども開始。4歳と5歳の2児の母でもある。

  • エモい空間で、ウマいコーヒーを。【Little Darling Coffee Roasters】

    「アメリカの西海岸をイメージして店舗づくりをしました」

    東京・乃木坂という都会のど真ん中にありつつ、どこか海外の郊外のような雰囲気。もとは宅配センターの集荷場の跡地に建設されたというだけあり、広い。だだっ広い。広い空間に、空の抜け感。まわりを囲む広々とした広場。ロケーションは最高だ。

    店内には、インダストリアル風な空間に、アートやデザインが散りばめられている。「Little Darling Coffee Roasters(リトル ダーリン コーヒー ロースターズ)」という店名は、青春映画『リトル・ダーリング』から名付けられたそう。それは、「愛おしいもの」「愛おしいひと」という意味がある言葉で語呂もよく、そこにある「エモさ」みたいなものが、コーヒーを飲むマインドにマッチするから。今回は、コーポレートバリスタの赤川直也さんに話を聞いた。

    コーヒーを提供する温度にこだわりたい

    コーヒーに携わる前は、和食の板前をしていました。そのときは、全然コーヒーは興味なかったんですよ。コーヒーの粉末にお湯に溶かして飲むくらい。当時働いているお店では、自分が作ってるものがお客さんに届いている姿が全然見えなかったので、自分が作ったものがお客さんにどう届いているか、お客さんの表情を直接ダイレクトに感じられる仕事をしたくて。そこで考えるようになったのが、カウンター業務。人と接しながら、ドリンクを提供するっていうサービスに憧れを抱いていました。そのころ初めて行ったスターバックスで、コーヒーってただ苦いだけじゃないのかも、と感動したことがあり。そのころから徐々に、コーヒー、いいなあと。

    板前を辞めスターバックスに入社し、コーヒーのイロハを学びました。働くうちに、自分にしかできないことをしたいなと思うように。そんなときに出会ったのがラテアート。弊社トランジットジェネラルオフィスのラテアートが有名な店に転職し、ラテアートを極めるように。

    この頃はとにかく、独学で猛勉強をしましたね。業務用のエスプレッソマシーンをネットオークションで競り落として(笑)、家でひたすらコーヒーを淹れました。アスリートが5日間休むと、取り戻すのに3日かかる、なんて言うじゃないですか。それと同じだなと思い、取り戻す時間がもったいないな、と。毎日向上できる環境をつくったほうが成長できるんじゃないかと思って、ただ場数をこなしていましたね。

    当時はインスタグラムが流行り出す前のころかな、ラテアートを発信してコミュニケーションとったり。もともとそういう手先の使うようなことが好きだっだし、練習すればするほどラテアートが上達するのも楽しくて。お客さんの反応が目の前でわかるのも嬉しかったです。

    そうしていくうちに、今度はコーヒーの味のほうに興味がでてきました。でも、コーヒーの味って、ほんとに複雑。どうしたらこれは美味しくなるんだろうと考えて、こうじゃない、ああじゃない、とトライアンドエラーを繰り返して。

    最初はエスプレッソマシーンしか触っていなかったですが、ハンドドリップも極めていきました。器具一つでもいろんな種類があるし、フィルターもさまざま。使う水も全然違えば、豆だってどんどん変化していく。コーヒーって研究しがいがあるし、どれだけやっても正解が見つからないし、正解に辿り着けない。そここそが、一番楽しいところですね。

    お店では、コーヒーの味だけじゃなくて空間作りにこだわっています。コーヒーの理論や知識をお客さんに伝えるよりは、この空間のなかでどういうコーヒーを出したらお客さんが喜んでくれるのか、を常に考えています。

    細かいところでいうと、季節やその日の気温によって提供温度をコントロールしたりとか。コーヒーって、温度変化で味が変わるから。冬の朝に買いにきてくれる人は、オフィスまで持っていく間に冷めないように熱めで提供したり。店内ですぐ飲むお客さんにはあまり暑すぎない適温のものを。

    豆の種類も聞かれたら温度に着目しておすすめしたり。暑い日は浅煎りのケニアとか美味しいと思うし、逆に今日みたいな寒い日はほっこりするようなブラジルの深い豆がいいなとか。

    ハンドドリップはちょっとずつわけて飲んでいただくんですけど、温度変化が楽しめるように淹れたりします。

    あとは店内の調光や、BGMの音量なども全体的に考えて、お客さんに居心地がよくなってもらうことを追求。一杯のコーヒーの感じ方って、ものすごい可能性があると思うから

    コーヒーを味わうとき、個人的には、ぜひバリスタのかたとコミュニケーションをとってみてほしい、と思います。コーヒーをゆっくりと一人で飲む楽しみももちろんありますが、バリスタと他愛もない話をするのも楽しかったり。その人しか出せない味があるから、それもまた楽しんでほしいですね。

    うちお店では、豆の香りを嗅げるようになっているので、それで直感的に選んでもらうのもいいですね。

    今までで、「このコーヒーがおいしかった」という思い出のコーヒーはいろいろあるんですけど、一番最初に感動したのはスターバックスで飲んだ、エチオピアシダモ。ベリー感が強くて、フローラルで。豆乳とあわせたら、ほんとにおいしくて。コーヒーのことを何も知らなかったときに飲んだので、その衝撃はよく覚えています。

    コーヒーの味に敏感でいるように、オフの日はコーヒーを飲まないです。すごく飲みたいんですけどね。逆に飲まないようにすることで、飲みたい気持ちをさらに高めるというか。そしてコーヒーのことを一回忘れることによって、0からスタートします。

    趣味は、カメラ。10年くらいやってて、仕事にすることもあります。昔ラテアートやっていたときにそれを綺麗に撮りたくて始めました。写真も、沼ですね。掘れば掘るほど、みたいなところがあって、コーヒーに似ているなあと思います。

    撮影:yoko


  • コーヒーグラインダーはどう選ぶ?タイプ別に解説【KOHII豆知識】

    コーヒーグラインダーはどう選ぶ?タイプ別に解説【KOHII豆知識】

    コーヒーを淹れる際に欠かせない道具の一つがグラインダー(コーヒーミル)。グラインダーとは、コーヒー豆を粉状に挽く機械のことです。お店ではたくさんの種類のグラインダーが売られていますが、どれを選べばいいのか分からない、と困ったことはないでしょうか?

    今回は、グラインダーの構造の違いやそれらが風味に及ぼす影響などについてお話しします。

    どんなグラインダーが「良い」グラインダー?

    まずはグラインダーの性能を決める基準についてお話しします。

    最も重要な基準は挽き目の均一性です。挽いた粉の大きさが揃っているか、微粉*が少ないかということです。(*微粉:小さく挽かれすぎたり砕けたりして出る非常に細かいコーヒー粉。雑味などの原因になります)

    粉に挽いた時点で粒の大きさがバラバラだと、抽出できる成分にばらつきが生じ、味の統一性に欠けてしまいます。つまり、均一な抽出ができる=挽いた粉の粒の大きさが揃っている、微粉が少ないものが高性能のグラインダーであると考えられているのです。

    その他には、刃などの部品の寿命、手挽きであれば挽き易さ、電動であれば挽く速度、などが性能の良し悪しを決めますが、それらは主に使われている素材や形状によって変化します。

    グラインダーのタイプ別解説

    グラインダーには大きく分けて3つの形状があります。

    ・フラットカッター

    ・コニカルカッター

    ・ブレードグラインダー

    の3つです。

    1つずつ解説していきます。

    ①フラットカッター

    Mahlkonig EK43、カリタ ナイスカットG、ネクストGなどで採用されている形状です。

    写真のようなディスクと呼ばれる2枚の円形状の刃によってコーヒー豆を粉砕します。

    鋭利な刃が高速回転することによって挽いていくため、粒の形は包丁で切ったような平べったい形になります。

    粗めのメッシュ(挽き目)よりも細かいメッシュが得意で粒度分布*が優れるため、エスプレッソ用のグラインダーなどでは多く採用されています。(*粒度分布:コーヒーの挽き目の場合、目盛通りのサイズでコーヒー粉の粒が揃っている度合い)

    ②コニカルカッター

    Mazzer River、Wilfa SVART Aromaなどで採用されています。

    写真のように立体的な螺旋型の下刃と、それを覆うように上刃が配置され、上下の刃ですり潰すように粉砕します。

    挽いた豆は切るというより砕いたような形になるため、粒の形は立体的で不揃いになりがちです。

    微粉の量はフラットカッターよりも少ないと言われており、筆者個人的にも同価格帯のグラインダーで比べるとコニカルカッターの方が微粉が少ない気がします。

    手挽きのハンドグラインダーは、ほぼ全てコニカルカッターです。

    こちらは、粒の形が立体的で表面積が大きくなる傾向があり、抽出が進みやすいです。そのためプアオーバーのドリップや時間のかかる水出しコーヒーなどに適しています。

    ③ブレードグラインダー

    比較的安価な電動グラインダーに多く見られる形状です。

    見た目からプロペラ式とも呼ばれます。

    プロペラのような羽が回転して豆を粉砕します。

    粒度の調整が時間によってしかできない点や、コーヒー豆自体に遠心力や重力がかかりにくく豆自体が移動しないため、粒度を揃えることが難しいデメリットがあります。

    刃の素材

    ハンドグラインダーに関しては、形状は上記の通りコニカルカッターが多いのですが、素材による違いがあります。

    主に使われているのは、セラミックか金属です。高価なものになると、ほとんどが金属製の刃になり、切れ味がよく、挽き易さが向上します。PORLEXなどはセラミック製で、Varia、Comandanteなどは硬い金属刃を内蔵しています。

    これからグラインダーを買おうと思っている方はこれらのことを知っておくと選びやすくなると思います。

    いつか、もっとメーカー毎など詳しくお話しできる機会があればお話ししたいです。

    コーヒーの味わいを決める重要な要素である挽き目。グラインダーのことを知ればもっともっとコーヒーを楽しめると思います。

    それぞれの特徴を理解してもっと美味しいコーヒーライフを!

    A cup of KOHII with love

    (編集:Tomoki)

  • KOHII PEOPLE #8 UIUXデザイナー:新谷友樹

    KOHII PEOPLE #8 UIUXデザイナー:新谷友樹

    オンもオフも、日々いろいろなクリエイションに携わっているUIUXデザイナーの新谷友樹さん。モバイルアプリ、WebやIoTシステム開発とコンサルティングを主軸としたデジタルプロダクション「factoy4」に所属しすべてのデザイン、アートディレクションを手がける一方で、週末はフリーでWebデザインや動画制作、イラストレーションを手掛けるなど精力的に活動し、2023年3月には趣味のフィルムカメラで撮影したフィルム写真展「DISTANCE」を開催。

    そんな新谷友樹さんの生き方の一端、そして、側にある“コーヒー”の存在について聞いた。

    「コーヒーを楽しむ空間や時間も含め大切で愛おしい」

    ーーどのようにコーヒーを楽しまれていますか。

    コーヒーは基本的に毎日飲んでいます。自分にとって、コーヒーにはいくつかの要素があって、
    ありきたりですが一番はリラックスして気持ちを整えるもの。でもそれは朝起きたときだったり、食事の後だったり、友達と会っているときだったり、それ以外もさまざまなシーンがありますよね。自然と自分の気持ちや身体が飲みたいと感じたときにコーヒーを飲むわけで、自分と無意識に対話している時間でもあります。

    真夏以外はホットを飲むのが好きなんですが、熱いのをガブガブ飲むことってない。そっと飲むわけで、そのゆったりした時間や過ごし方が、自分にとってかけがえのない時間。人と一緒にいるときも、一人のときも、自分にとっての小さなストーリーがそこにはあります。

    スペシャルティコーヒーと出合って約7年くらい経っているんですが、今では素人なりに自分の好みの味とかもわかってきました。浅煎りのフルーティーなテイストのものが好きなんです。仕事や旅行で全国各地へ行くときには、必ずその土地のロースターに寄って飲み比べたりしていますし、自分なりのこだわりもあります。

    ただ、そうした中でコーヒーの「味」を楽しむだけではなくて、やはりそのときのシーン、気の合う友人といるのか、一人で仕事できているのかなど、自分にとっての「ストーリー」がそこにはあって、コーヒーだけでなくその場の空間や時間など含めて、大切で愛おしい時間なんだと思います。

    浅煎りが好きなので、エチオピアなどフルーティな豆が好きです。自分でもハンドドリップで淹れて飲んだりしていますが、お気に入りのコーヒーロースターに行って、バリスタの方と少し会話しながら飲むコーヒーが好きです。

    コーヒーの味はもちろんですが、人や空間にもこだわったロースターを選んでいます。あまり混雑した場所は好きではないので、空間にゆとりがあって、コミュニケーションが心地よくとれる場に行くことが多いです。たまにレトロな喫茶店に行き、深煎りのコーヒーを一人で飲むゆったりとした時間や空間も、大切なシーンです。

    「他人にGIVEできる大人は、素敵」

    ーー新谷さんのマイルールは?

    基本的には朝7時までに起きて、その日のタスクを確認します。平日は企業に属するデザイナーとして、週末はフリーで活動するデザイナーとして切り分けていますが、いずれも朝は大体7時には起きて、その1日に向けて準備するのがルーティーンでありルールです。

    朝食は摂らないのですが、ジューサーで作ったバナナジュースを飲み、これで頭と身体にスイッチが入ったと言い聞かせながらスタートを切っています。タスクは日々違うのでスケジューリングは臨機応変に対応していて、その部分では明確なルールは設けていないです。

    ーー素敵な⼤⼈とは?

    「誠実でユーモアがあって、自分らしく素直に生きている人」ですね。あとは「他人にGIVEできる人」だったり、「責任を自分で取れて覚悟を持って目標に向かって楽しんでいる人」。その中で心の余裕やユーモアがあれば素敵だな、カッコいいなと思います。影響が小さくても、何かしら人のために働いたり活動している人は素敵だと思います。

    ーー1 ⽇にあともう5分あったら?

    何も考えずに「散歩」をします。

    これには、理由があって。以前友人に瞑想を勧められたことがあったのですが、自分にはあまり合わなくて、続けられなかったんです。でもあるとき、自然科学という分野の研究を長年されていた方と話す機会があって、その方が何も考えず散歩することで、アイデアがふと降りてきたり、心の整理整頓ができたりするから、まずは散歩することが良いよと勧められました。

    いろいろな感情や情報をまずは置き去りにして、歩くことで周りの風景は変わるけど、自分自身の心の声を聞き、ただ無心で歩くことでその心象風景みたいのものが、意味のあるものになる瞬間があるんです。まったく何も変わらないときもありますが(笑)

    新谷友樹

    東京を拠点に活動しているUIUXデザイン、イラスト、Videographer、アートディレクター。広告デザインを経て、デザインとテクノロジーで課題解決するデジタルプロダクション「factoy4」に従事。アプリやWeb、システムデザインを軸としたUIUX、グラフィックデザイン、動画コンテンツを主に手掛ける。また大手Webマガジンにてデザインコラムの連載や、3Dプロダクトデザイン、Adobeツールの講師など幅広く活動中。 2016年には THE FASHION HACK TOKYOにて「Android Experiments OBJECT賞」を受賞。

  • 自宅で美味しくコーヒーを淹れるために揃えたいものは?【KOHII豆知識】

    自宅で美味しくコーヒーを淹れるために揃えたいものは?【KOHII豆知識】

    皆様は自宅でコーヒーを淹れていますか?近年ではおうちで過ごす時間が増えたことにより、自宅でコーヒー淹れたいと考える方も多いのではないでしょうか。今回は自宅でコーヒーを淹れる際に必要なものを、優先順位も含めてお話ししていきます。

    ハンドドリップ(プアオーバー)を始めたい!

    自宅でコーヒーを淹れると聞いてまず思いつくのはハンドドリップ(プアオーバー)でしょう。ドリッパーにペーパーフィルターをセットして、上からお湯を注いでコーヒーをドリップする方式です。お店でも良く見かけると思います。必要なものはドリッパーとペーパーフィルターのみ。お店で挽いた状態でコーヒー豆を買って来たら淹れられます。揃えるものは、とりあえずはドリッパーとフィルターだけ。意外と少ないですよね。まずはこれだけ揃えてコーヒーを淹れてみましょう。

    より美味しくコーヒーを淹れたい方は色々と揃えていきましょう。

    美味しくコーヒーを淹れるために必要なもの

    ここからはより美味しくコーヒーを淹れるためのものをご紹介します。

    お店でよく使用されているものは、ドリップスケール、ケトル、グラインダー、温度計、サーバーなど。優先順位が高い順に解説していきます。

    ①ドリップスケール

    重さと時間が一緒に計測できるものです。美味しいコーヒーを淹れるためには何よりも「はかる」ことが大切です。コーヒー粉と注ぐお湯の量、ドリップにかかった時間など。計測しないと何が良くて何がだめなのか分かりません。例えるなら、目隠しで料理しているようなものなので、優先順位が1番高いのはスケールです。

    時間と重さが計測できれば良いので、普通のはかりとスマホなどのストップウォッチ機能などでも問題ありません。

    ②ケトル

    ハンドドリップ用の細い口がついたポットを選びましょう。きっちりお湯を量ったら、次にマスターしたいのが注ぎ方。細くゆっくり〜太くしっかり、まで水流を調整しやすい細口のケトルが最適です。またハンドドリップといえばケトルから細くお湯を注いでるイメージがありますよね。せっかく自宅でコーヒーを淹れるのであれば、その雰囲気も大事したいという観点からも、優先順位は高め。

    先の細い軽量カップや急須など細く注げるものでも代用できます。

    ③グラインダー

    コーヒー豆を粉に挽く器具です。豆の状態で買ってきた方が、コーヒーは長期間保存できますし、挽いた時に香りが1番強く出ます。さらに自分で挽き目を調整できるため、より自分が狙った味わいも出しやすいです。ただ、メンテナンスなども含めて手間がかかるということと、お値段も品質もピンキリであり、それなりに良いものが必要であることから優先順位は低めです。

    上記3つが特に重要な、まず揃えたいものです。あとは、1度に2杯以上ドリップする方はサーバーを持っておくと、また、お湯の温度を計るための温度計などもあると便利です。

    コーヒーを淹れる、というとお店などでは難しそうに見えるかもしれませんが、必要なものは意外と少なく簡単に始めることができます。そして、こだわりたい人はどんどん器具を揃えて美味しいコーヒーを追求することもできます。簡単にできる上にこだわることもできる2面性がコーヒーの魅力の1つでもあります。

    フレンチプレスやエアロプレス、ドリッパーいらずのフィルターなどより手軽に淹れられる器具もありますし、コーヒーメーカーなども便利です。どのようにコーヒーを自宅で淹れるか、それぞれのスタイルに合わせて楽しんでください。この記事を参考にコーヒーのある素敵なおうち時間を過ごしてくださいね!

    A cup of KOHII with love

    (編集:Tomoki)

  • 神秘的な国、エチオピアのコーヒーが優れている5つの理由【KOHII豆知識】

    神秘的な国、エチオピアのコーヒーが優れている5つの理由【KOHII豆知識】


    コーヒーベルトを中心に、コーヒーを生産している国は70か国近く存在すると言われています。その中でもエチオピアは、多様なコーヒー産地の中でも格別なオーラがあり、その味も、また特徴的です。今回のKOHII豆知識ではエチオピアコーヒーの魅力について紹介します。

    1.コーヒーの起源はエチオピアにある。

    コーヒーはエチオピアで発見されました。奇しくも我々人類の先祖でもある猿人、ルーシーが誕生したのもエチオピアと言われています。

    みなさんは、エチオピアを産地とするコーヒー豆がHeirloom(エアルーム)と記入されているのを見たことはありますか?他国ではブルボン種のように聞き覚えのある種類に分かれているのに対して、Heirloomはエチオピアのコーヒーによく使われる用語です。

    エチオピアのコーヒーには、古来より自生する品種が多くあります。そのような在来種をHeirloomと呼びます。エチオピア在来種は、コーヒーが誕生した時から年々、自然交配を起こし、それらを厳密に分けると、その種類は1万種類を超えますが、それらが多種多様に混ざり合い栽培され、Heirloomとしてカテゴライズされます。

    コーヒーの起源であるエチオピアのコーヒー。農家さんが生産するHeirloomの中にはゲイシャのような品種が混ざっていることも。エチオピアのコーヒーの独特の魅力、複雑な味わいと面白い風味の背景にはとっても長い歴史があるんです。

    2.標高の高さ

    コーヒーの生産国は標高の高い地域が多く、中でもエチオピアは高地帯に位置しています。例えば有名なコーヒー産地であるコロンビアの農園の標高が主に1800mであるのに対し、エチオピアは2000mを超える場所に位置する農園が多く存在します。エチオピアの首都であるアジス・アババだけでも、その標高は1800mを超えています。

    標高はコーヒーの味に大きく影響します。標高が高いということは、寒暖差が激しい生育環境であるということ。コーヒーはそんな過酷な環境でこそ、どんどん美味しく育ちます。

    3.コーヒー生産に適切な気候

    エチオピアの気候は、日本の秋に似ています。湿度は高く、コーヒーの栽培に適しています。さらに乾季と雨季がはっきり分かれているので、コーヒーを加工する際に大きな利点があるのも特徴的。雨季にはコーヒーがたくさんの水分を吸収して成長します。乾季には、雨が降らない低い湿度の状態で、コーヒーを乾燥させることができます。このような気候はコーヒー生産に関して言えば、まさに天に恵まれた環境だと言えるでしょう。

    4.栄養分が高い土壌

    エチオピアは土壌にも恵まれています。エチオピアの土壌は栄養分の多い火山灰でできたバーティソル(Vertisol)です。バーティソルは硬い性質のために雨は降っても水分が抜けやすく、コーヒーの木の根は土壌の深くまで伸びるようになります。それにより、自然にコーヒーの実に届く栄養は増えます。

    5.エチオピア人はコーヒーを愛している

    エチオピアの人は本当にコーヒーを愛しています。エチオピアには、コーヒーセレモニーと呼ばれる家にお客様が訪れたときに、煎りたての豆でコーヒーを淹れてくれるという文化があります。私たちのコーヒーの楽しみ方や器具、抽出方法が様々に枝分かれしてきたのに比べて、セレモニーで出されるコーヒーの淹れ方はコーヒー粉をお湯に入れ沸かすといういたってシンプルなな方法。ですが、エチオピア人にとってコーヒーとは、彼らのアイデンティティの根底に関わるものであり、生き方の一部なのです。

    これからエチオピアのコーヒーはどのように進化を遂げるか

    無限な可能性が潜んでいるエチオピアのコーヒーは、これからどのように進化を遂げていくのでしょうか。エチオピアでは2020年にはじめて、Cup of Excellenceカップオブエクセレンス)が開催されました。この出来事はエチオピアコーヒーの歴史に残り、この先、様々な現象を生み出すでしょう。

    本来、エチオピアにはコーヒー農園があまり数多く存在していません。自然の環境で収穫される在来種を地域の人々が収穫し、加工所に持ってくるというのが主流。しかしCup of Excellence開催以降、小規模農園が登場し、計画的に農業を進めるようになりました。計画的な生産により、Kurumeや74110、74112などと多様な品種が生まれ、より高品質で個性のあるコーヒーが市場に登場しました。品質が高く、よりバラエティに富むようになったエチオピアのコーヒーの価値は、これからも自然と向上していくでしょう。

    エチオピアのコーヒーは時代の変化に合わせて敏感に変化し続け、その生命力溢れる進化はコーヒーの味にも表れています。

    みなさんが日々飲まれているエチオピアのコーヒー。この記事が、エチオピアのコーヒーについてより深く知る機会になれたなら幸いです。時には地球の反対側で育つコーヒーを想像して、目の前の一杯のコーヒーを楽しむとより充実したコーヒーブレイクを過ごせるかもしれませんね。

    A cup of KOHII with love

    (編集:Jongmin)

  • コーヒーのソーサーはアリかナシか。受け皿ではない本当の役割とは?

    コーヒーのソーサーはアリかナシか。受け皿ではない本当の役割とは?

    ソーサーのかつての役割は「受け皿」にあらず

    この間、近所のカフェでお茶をしていると、ソーサーにふと目が留まりました。

    ここ数年はコーヒーもテイクアウトする機会が増えて、外でも家でもタンブラーで飲むことが多かったのですが、陶磁器のカップですするコーヒーのおいしさをあらためて感じました。そして、気になったのが「ソーサー」という存在。何のためにあるんだろうと軽くググってみると……「カップから飲み物を移し、飲む器として使われていた」とある。信じ難く、「全日本コーヒー協会」のウェブサイトを覗いてみても答えは同じ。マリーアントワネットの時代には熱い飲み物をソーサーにあけて冷ましていたようです。嘘のような本当の話を知りました。

    現代でのソーサーのお役目は、ティースプーンや砂糖、ミルクの置き場所が一般的。

    例外ですが、オーストリアのウィーンの喫茶店ではティースプーンには別の定位置がありました。ソーサーもあるのにわざわざコップの上に置く理由って何でしょうね。

    あとは、受け皿として。実際のところ、シンガポールでソーサーは大活躍しています。日本ではウェイターさんがサーブするときにこぼれることは滅多にありませんが、こちらでは気にも留めていません。「だってソーサーがあるでしょ?」とでも言いたげな堂々たる姿です(あふれるほどたっぷり注いでくれてありがとうございます)。

    カップとソーサーの組み合わせにルールなんてない

    シンガポールではカラフルなプレートをよく見かけます。これは、通称「ホーカー皿」と呼ばれるメラミン樹脂の器。ホーカーとは屋台街のことで、チキンライスやバクテー、サテなど安くておいしいローカル料理を扱う屋台では大抵、この食器が使われているのです。

    軽くて丈夫、熱にも強い。しかも安い。スタッキングできるので日本の台所でも重宝するだろうと、帰国時にお土産として渡すと喜ばれます。

    カップは磁器、ソーサーはメラミン樹脂という組み合わせが楽しい。

    これまでカップソーサーは「セット使い」が当たり前だと思い込んでいたので、自由で新しい食卓に出会えて、なんだかうれしくなりました。

    アラビアのいつものカップソーサーを……

    今日は空色のソーサーに変えて、午前のコーヒーブレイク。

    午後のおやつの時間では、サイズを変えてクッキーを添えてみました。色を変えるだけで気分が変わります。あってもなくてもいいと思っていたけれど、ソーサーやるじゃん。器が変わると味覚も変わるかもしれませんよ。enjoy!

    ※参考:「全日本コーヒー協会

    執筆:naoko tsutsumi
    編集者。関西と東京の出版社勤務を経て、フリーランスのエディター/ライターとして活動する。ヨガやボディーワーク、旅の雑誌づくりに携わる。近頃の定番は、京都発のコーヒーブランド「% Arabica」のブレンド。京都の本店にもいつか行きたい。関西生まれシンガポール在住の猫飼い。